不退寺 (奈良市)
奈良時代、平城京の北側を通っていた佐保・佐紀路には名だたる大寺院がなく、一年を通して観光客が少ないが、ひなびた古寺が静かな佇まいを見せている。

また美しい仏像が多く、「不退寺・聖観世音菩薩像(重文)」「法華寺・十一面観世音菩薩(国宝)」「海龍王寺・十一面観世音菩薩(重文)」は、佐保路の三観音と言われている。さらに秋篠寺の伎芸天(重文)も加えて、宗教心がなくても素直に感動する仏達に出会うことができる。

不退寺(真言律宗)の正式な名称は不退転法輪寺といい、平城(へいぜい)天皇が退位後住んだ御所を、孫で平安時代の歌人・伊勢物語で知られる藤原業平(なりひら)が寺に改めたそうで、業平寺とも呼ばれていた。
最盛期には南都15大寺に数えられていたが、度重なる火災によって、往時の面影はない。
聖観世音菩薩(『重文)
不退寺口バス停(近鉄奈良駅から自衛隊前行バスに乗車)から北へ細い道を3分ほど進み、途中、JRの踏切を越えると、切妻造りの南門(鎌倉時代末・重文)が見えてくる。

この門をくぐると雑木を通して、間口4軒、寄せ棟造りの小さいがどっしりした本堂(室町時代・重文)が佇んでいる。
雑木と見えたのは、ツバキ、レンギョウ、カキツバタ、ハギなどで、季節になると花を咲かせ、奈良の花の寺の一つとなっている。

右手の小さな池の向こうにある重文の多宝塔(鎌倉時代)は、珍しくも平屋。通常、多宝塔は二重なので不思議に思ったが、当初は二重であったが、後に2階部分が何らかの理由で失われたらしい。

本堂には、本尊のの「聖観世音菩薩像(重文)」が安置されている。
背丈1m90cm、豊満な木造の仏像は珍しく、頭の両側でリボンを結び、それが肩にかかって膝まで垂れている。
藤原業平自身の作、あるいは美男だった彼をモデルにしたもの、など、色々な説がある。

それを取り巻くように「不動明王」「金剛夜叉明王」などの五大明王像(いずれも重文)が配置されている
住 所 奈良市法蓮町517
電 話 0742−722−5278
アクセス 近鉄奈良駅から自衛隊前行きバス、不退寺口下車徒歩3分
時 間 午前9時〜午後5時
拝観料 400円(通常展)
500円(特別展)

600円(業平展)
駐車場 8台
URL http://www3.kcn.ne.jp/~futaiji/
南門(重文)
多宝塔(重文)
本堂 (重文)
大威徳明王(重文)
佐保路にひっそり佇む藤原業平ゆかりの花の寺。本堂に安置されている聖観世音菩薩(重文)が美しい。