たかばたけ茶論 (奈良市)
近鉄奈良駅から奈良公園を横切って20分、春日大社二の鳥居手前から右折して、1000年間人の手が入っていない春日原生林の麓、静寂そのものの「下の禰宜(ねぎ)道」を進む。ここは「ささやきの小径(こみち)」という愛称で親しまれている絶好の散策路だ。
かってこの道は、上・中禰宜道とともに高畑の社家町から禰宜達が春日大社に通った道だ。
やがて森が途絶えて高畑(たかばたけ)に出る。
お屋敷街という言葉は適切でない。お屋敷街といえば、かならず何軒かの成金趣味のごてごてした住居が混じるが、この一帯にはそのような建物は皆無。
敷地が広く取られ、立派な門構え、塀は土塀の文字通り純和風の屋敷が並ぶ。洋風の建物もあるが、それも大正・昭和初期の洋館で、「この建造物は貴重な国民的財産です」と書かれた「登録有形文化財」のプレートが貼られたりしている。

ここは時の流れが止まったよう、あるいは自分がタイムスリップして、50年・100年前の時代に戻ったような感覚に陥る。
冬に歩くことが多いせいもあるだろうが、いつも写真のように人っ子一人いない。
この地区は連れなしで、自分ひとりで歩くことをお薦めする。

この一帯は多くの文人が住み、その内の一人、志賀直哉が昭和4年から9年間住んだ家も保存されていて、内部を見学できる。
この家の向かって右隣、土塀が続く小路に、それらの文人が集った「たかばたけ茶論(さろん)」がある。
志賀直哉旧宅(別途紹介予定)
白壁・土壁が続く小路、右手が入口
白く塗られた建物
この建物は画家・足立源一郎が大正8年に南フランスのプロバンス地方の田舎家を模して建造したもので、多くの作家や画家がここに集って談笑した。
広い屋敷の一部になっていて、裏手に庭や住居があり、白いガーデンテーブルが置かれて、冬以外はここで喫茶する人が多い。
内部は、カウンターとテーブル2つの小さなスペース、三方が窓のサンルーム風で明るい光が差し込む。この写真は修整しすぎてキレイに見えるが、実際は素朴な雰囲気だ。
たかばたけ茶論のイメージは、白いテーブルと椅子のガーデンテラス。
冬以外は、開放的なこちらで喫茶する人がほとんどだ。
出されるものはコーヒー・紅茶とケーキだけ。
一杯550円と少々お高い。
住 所 奈良市高畑大道町1247
電 話 0742−23−2038
定休日 毎週火曜日(以前は第1第3水曜日も休業だったようだが、この部分は削除されていた。)
メニュー コーヒー・紅茶550円 ケーキ650円
アクセス 近鉄奈良駅から奈良交通バスで7分、破石徒歩5分
奈良市内で一、二を争う素晴らしい散策路の途上、かって多くの文人が住んだ閑静な屋敷街にある喫茶サロン。志賀直哉旧宅に隣接。
時の流れが止まったような高畑一帯
春日大社二の鳥居
ささやきの小径
2006.1.24作成