正面には「外来者の入浴はご遠慮下さいー湯ヶ野区長」の看板。上の茶色の看板にも同じようなことが書かれてある。

1階が共同浴場。河津川が右手を流れ、渓流の音が聞こえてくる。久しぶりの「じも専(地元専用)」での入浴、ベンチに座って喜びの余韻に浸った。

それぞれ、3〜4人が入れる規模の浴槽が2つ。意図的かどうかは不明だが、若干の温度差があった。両方とも適温の範囲内だった。

床はグレーの細かなタイル、浴槽はコンクリートが打ちっぱなしのシンプルなもの。右手には湯講の方のだろうか、金額を付した名札がかけられていた。

湯ヶ野温泉 湯ヶ野区共同浴場 (静岡県)

温泉名 : 湯ヶ野温泉

河津町は伊豆半島の南端に近い東海岸に位置し、北は800メートル以上の天城の山々を境に伊豆市、南は下田市に接していいて、総面積の83%が山林・原野で占められている。

河津川の上流には火山から流出した溶岩で形成された大滝などの数多い滝があり、海岸線も今井浜などの景観に恵まれている。
この自然に加えて、河津町には3つの観光資源がある。

1つは、町域の山間部や海岸線のどの7ヶ所で、豊富に湧き出る温泉群である

2つ目は、町が「花の町、かわづ」とPRしているように、町域には早咲きで知られる河津桜をはじめ、1100種6000本のバラが咲く河津バガデル公園、かわづ花菖蒲園、かわづカーネンション見本園などの花の施設がある。

特に、1月下旬から蕾がほころび始め、3月上旬までピンク色の花を咲かせる早咲きの河津桜は、満開時にはその模様が全国に報道され、多くの観光客で賑わう。

すっかり忘れていた伊豆の踊子のストーリー。
宿泊していた福田屋で手にした単行本の中の「伊豆の踊子」が意外と短編だったのに驚いたが、そのとき目に飛び込んできたのが、河津川を挟んだ向かい側の共同浴場から、裸の踊子が「私(学生)」に手を振る部分。

うん!? まだこの共同浴場あるのかな、とすぐ階下に下りてご主人に聞いたら、「残ってますよ」の返事。

「地元の人でないと入れない?」「ウチの浴衣を着て行ったら入れます」「幾らですか?」「無料です」というやり取りの後、慌てて部屋に戻った。

タオル・デジカメ・ノートを袋に詰めて、川端康成が泊まった「踊子の1」から飛び出し、河津川を跨ぐ橋を渡って対岸右手の共同浴場に向かった。

共同浴場は、旅館・湯本楼の階下(別施設)1階にあり、河津川に面している。

ノーベル賞作家・川端康成が旧制第一高等学校生(現東京大学教養学部)のとき滞在した湯ヶ野温泉福田屋は、湯ヶ島温泉湯本館とともに「伊豆の踊子」ゆかりの温泉宿だ。

今回、彼が3日間過ごした2階の「踊子の1」に宿泊し、小説中、踊り子が裸で学生に手を振った河津川対岸の共同浴場で入浴した。
「じも専=地元住民専用の共同浴場」に入れたのは湯田中温泉大湯以来の2回目、折からの河津桜の満開と共に2回の幸運に恵まれた。

施設名 : 湯ヶ野区共同浴場 (入浴日:2012.3.6)

所在地 : 賀茂郡河津(かわづ)町  

前方の沼津方面から来た場合、この踊り子の看板(湯ヶ野温泉)を見落とさずに右折。下田方面からだと写真の通り左折。

湯ヶ野温泉でも河津桜が満開だった温泉宿は国道には面していないので通り過ぎてしまう。

河津川沿いの小さな温泉。前列、左から2軒目の3階建ての一階が地元専用の共同浴場。

河津町の山側から相模湾に向かって流れる河津川沿いに、大滝・七滝・湯ヶ野・・谷津・今井浜・河津浜の7つの温泉が点在している。これらを総称して河津温泉郷と呼ぶ。

いずれも旅館数軒(他に民宿・ペンション)の小さな温泉地だが、山里・渓流・海岸と周囲の自然が異なっている。

東京方面からやって来る場合は、2つのルートがあるので、途中の渋滞状況、どこの温泉に立ち寄るか、海側がいいか山側がいいか、などを勘案して選択すればいい。

一つは、東海岸沿いの国道135号線を南下し、伊東・稲取・熱川温泉等を通過するルート。

ニつ目は、三島方面から国道136・414号線で修善寺・嵯峨沢・湯ヶ島温泉等を通過し天城越えをするルートだ。

湯ヶ野温泉は国道沿の横を流れる河津川にそって、旅館4軒とペンション・民宿が若干ある目立たない温泉地で、よほど気を付けないとあっという間に通り過ぎてしまう。

湯ヶ野温泉のシンボル、、名作・伊豆の踊子の舞台となった福田屋。河津川を跨ぐ橋の向こう、2階が川端康成が宿泊した踊り子1号室(この部屋に宿泊、記事追って掲載)。

3つめは川端康成の名作・伊豆の踊り子の舞台であることだ。

湯ヶ島、天城峠を越えて下田に向かう旅芸人一座と道連れになった、孤独に悩む青年の淡い恋と旅情を描くこの物語は、彼が19歳ののとき、湯ヶ野で踊り子達と出会った実体験に基づき、この小説が生まれることになった。

「伊豆の踊り子」は、湯ヶ島・湯ヶ野温泉だけでなく、伊豆半島全体、特に中伊豆、東伊豆の重要な観光資源だ。

●1981年(昭和56年)より、国鉄(1987年よりJR東日本)・伊豆急線・伊豆箱根鉄道線直通特急列車の名称に「踊り子」号の名称が充てられている。

●過去に6回、映画化されている。主演女優は、「田中絹代・美空ひばり・鰐淵晴子・吉永小百合・内藤洋子・山口百恵」と、それぞれの時代の人気女優だった。

住 所 静岡県賀茂郡河津町湯ヶ野(番地不明)
電 話 無し
交通機関 東京(東名高速)→厚木IC(厚木・小田原道路)→小田原(国道135号線)→伊東→湯ヶ野(約4時間)
東名高速・沼津IC(国道1・136・414号線)→三島・修善寺→湯ヶ野温泉(約3時間)
伊豆急行線河津駅より東海天城線バスで約15分、湯ヶ野下車徒歩3分
施 設(日帰り)
特に無し(町営駐車場有り)
宿 泊 不可
泉 質 石膏泉(カルシウム・ナトリウムー硫酸塩温泉 43.4℃ pH8.2)
適応症 不記載(理由は「温泉の基礎知識ー温泉の効能」参照)
入浴時間 不明
定休日 不明
入浴料金 無料
外来者は入浴不可だが、地元旅館に宿泊の場合は浴衣を着ていけばOK(福田屋宿泊のケースで、他の旅館・民宿・ペンションの場合はOKか確認していない。)

入浴施設 男女別の内湯)
浴室備品 シャンプー類、シャワー・カラン無し
観光スポット 河津桜(早咲きで有名)、河津バガデル公園、かわづ花菖蒲園、かわづカーネンション見本園、河津七滝、今井浜海水浴場、浄蓮の滝、下田
お土産・食事 ワサビ及び同加工食品、地元ニューサマーオレンジを使ったボデイソープ・シャンプー、天城の水
温泉街入口に店舗があったが食事処があるかどうか確認を怠った。
近くの温泉 ・今井浜・河津浜・谷津・河津七滝・大滝・修善寺蓮台寺河内大沢稲取熱川・北川・天城湯ヶ島温泉郷・松崎温泉
河津町HP
河津温泉郷HP
福田家HP
http://www.town.kawazu.shizuoka.jp/
http://www.kawazu-onsen.com/ryokan/index.html
http://www4.ocn.ne.jp/~hukudaya/
雑記帳 700ヶ所を越える施設で宿泊・入浴したが、じも専での入浴が2回目。
福田屋のご主人から「ウチの浴衣を着て行けばOK、と聞いて天にも昇る気持ちになった。
部屋に戻り、湯巡り3種の神器を手にし、家内に「じも専に入れる!」と言って飛び出したが、ジモセンって何?の質問は無く、後から「どうだった?」の一言も問われず、完璧に無視された。
データ (変更されている可能性もあります。お出かけ前にご確認ください。)

例年より開花が遅れて、湯ヶ野温泉に宿泊したこの日(2012.3.6)が満開だった河津桜。湯ヶ島温泉からは車で10分足らずだ。

伊豆と言えば金目鯛。この日泊まった湯ヶ野温泉福田屋でも煮つけが出た。

共同浴場から見た福田屋。即ち、伊豆の踊り子が見た福田屋で、この角度から正面2階にいる学生に手を振ったことになる。

福田屋の大女将によれば、川端康成が福田屋に宿泊した頃の共同浴場は「柱一本だけだったから踊り子が手を振るのが福田屋から見えたはず」とのこと。当時は上屋が違い、混浴だったのか?確認するのを忘れた。