吉野町(よしのちょう)は、南北に長い奈良県の中部、吉野郡の北部にあって、町の中央部を東から西に吉野川が流れており、和歌山県に入って紀ノ川となって紀伊水道に注ぐ。
奈良県南部は過疎化が著しいが、吉野町も1970年には16,400人あったのが2018年には6,800人弱までに減少している。

町域の一部は吉野熊野国立公園に指定されており風光明媚、中でも日本有数の桜の名所である吉野山が有名だ。
ここの桜の歴史は長く、遠く平安時代の古今和歌集にも登場している。吉野山全山に咲く桜は、標高差があるので麓の下千本から中千本、上千本、奥千本へと、一ヶ月弱をかけて咲き上がっていく。
桜の品種は200種に達するが、メインはシロヤマザクラで、江戸で開発され全国に広がったソメイヨシノはほんの僅かである。

また吉野山一帯は、世界遺産で熊野古道で有名な「紀伊山地の霊場と参詣道」の一部を構成し、吉野山の尾根筋には、国宝の金峯山蔵王堂・仁王門」、重文の「吉水神社」「吉野水分神社」などの寺社仏閣が建っている。」

また銘木として知られる吉野杉の集積地であり、身近なところでは加工品の割り箸が生産されている。

吉野温泉 吉野温泉元湯 (奈良県)

男性用の畳2畳分くらいの小さな内湯。周囲が赤茶色の温泉成分が付着して良い味を出している。

「歌書よりも軍書に悲し吉野山」は芭蕉十哲の一人、各務支考(かがみしこう)の句だが、吉野山は、古くは大海人皇子時代の天智天皇をはじめ、源義経、大塔宮護良親王、後醍醐天皇、楠正行、豊臣秀吉など歴史に登場する皇族・武将の栄枯盛衰の舞台となった。

吉野山の桜は、すでに平安時代の古今和歌集に「こえぬ間は吉野の山のさくら花ひとづてにのみ聞きわたるかな /紀貫之」と登場しており、古くから桜の名所であったことが分かる。
絶え間なく寄進されてきた桜の総数は3万本、品種は200種にのぼるが、その大部分はシロヤマザクラで、江戸で開発された全国区のソメイヨシノはわずかである。標高差のある吉野山の桜開花期間は約1ヶ月と長く、麓の下千本から咲き始め、中千本、上千本そして奥千本へと移っていく。

吉野山の温泉宿は、温泉枯渇などで減少し、今は2軒を残すのみ、その内の一軒、吉野温泉元湯にほぼ15年ぶりに訪れた。

フロントと言うより帳場の雰囲気。駐車場から小橋を渡り石畳を50mほど歩くと玄関が見えてくる。何れも大正・昭和初期の雰囲気だ。

金峯山寺(蔵王堂・仁王門)や吉水神社等の寺社仏閣の門前町らしく、食事・喫茶処や土産物屋が吉野山の尾根に立ち並ぶ。その尾根の東側、吉野山を見上げる谷底に、明治3年に開業した吉野温泉元湯がひっそりと佇む。

客室数がわずかに7部屋(何れもトイレ付き)、時の流れに取り残されたような小さな旅館だ。駐車場に車を止め、階段を数歩上って生垣に沿った小道を進むと、いまどき珍しい引き戸の玄関が出迎える。
フロント・ロビーあたりは大正・昭和初期の雰囲気が漂い、ノスタルジーを感じさせる。
左前方には日当たりのよい小さな縁側風のコーナーがあって椅子とテーブルが置いてある。
島崎藤村が明治26年、1ヶ月ほど滞在し執筆した部屋がいまも昔のままに残っており、大町桂月や山中峯太郎らの文人も滞在している。

宿泊料金は、平日2人1室1人15、000円前後で、じゃらんのクチコミ評価は、利用者が少ないため平均点が出てないが、食事が量的にも質的にも良いようだ。

風呂は、2mx3m程度の小さめの内湯が男女別に各1ヶ所で、褐色の湯の泉質は「含二酸化炭素ーカルシウム・ナトリウムー炭酸水素塩泉」、湯量は8ℓ/分と少ない。
日帰り入浴を受け付けており、午前11時~午後3時(受付は午後2時30分迄)、料金は大人700円だ、
施設名 : 吉野温泉元湯 (入浴日:1回目2003.12.8 2回目2018年8月31日)

所在地 : 吉野郡吉野町吉野山

データ (変更されている可能性もあります。お出かけ前に当該施設のHPなどでご確認ください。)
住 所 吉野郡吉野町吉野山902-1
電 話 0746-32-3061
交通機関 西名阪自動車道・郡山ICから国道24・169号線等で約40km
近鉄吉野線吉野駅から徒歩20分(宿泊の場合送迎車有り)
近鉄吉野線・吉野神宮駅からタクシー
施 設(日帰り) 湯上り処(冷水/自動販売機有り)、駐車場(10台) 
宿 泊 7室(トイレ付) 平日2人1室1人15、000円前後(夕・朝食付き)
泉 質 含二酸化炭素ーカルシウムナトリウムー・炭酸水素塩泉(泉温12.7℃ 7.85ℓ/分 pH6.4 湧出時淡黄色)
適応症 不記載(理由は「温泉の基礎知識ー温泉の効能」参照)
入浴時間 11~15時 (予約不要) 
定休日 不定休
入浴料金 大人700円
入浴施設 内湯男女各1
浴室備品 シャンプー、ボデイソープ、ドライヤー
観光スポット 吉野山(桜)、金峯山寺(きんぶせんじ)蔵王堂・仁王門、吉水神社、如意輪寺、吉野神宮、吉水神社
お土産・食事 吉野久助堂(吉野葛の菓子)、芳魂庵(葛餅)、柿の葉寿司
近くの温泉 吉野山温泉、洞川温泉、天の川温泉、宮滝温泉中荘温泉
吉野町HP
吉野温泉元湯HP

観光協会HP

http://www.town.yoshino.nara.jp/
http://www.motoyu-yoshino.com/index.php

http://www.yoshinoyama-sakura.jp/

濁り具合はこの位で、油膜状のものと茶色の細粒が浮いていた。

可愛らしくほっとする湯上がり処。

フロントから少し離れた所にあるクラシックなロビー。

大きなガラス窓を通して、立派な石組みの庭園が見える。

同じ造り・広さの女性用内湯。前回来たときはこちらで入浴した。但し、外の眺めはこちらが劣る。

尾根筋に多数の食事処、土産物屋が建ち並ぶが、温泉街でなく、金峯山寺門前町の雰囲気だ。

吉野温泉への最後のアプローチは鬱蒼とした森の細道だ。

吉野山の東側谷底にある吉野温泉。前を小川が流れ下っている。

国宝の金峯山寺(きんぷせんじ)蔵王堂。木造建築としては、東大寺大仏殿に次ぐ大きさ。内部に安置されている蔵王権現(重文)の三体の仏像の凄まじい形相に圧倒される。

金峯山寺は熊野古道でお馴染みの世界文化遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の対象寺院。

桜の名所、吉野山にはかなりの宿があるが、温泉宿は、温泉の枯渇などもあって現在は吉野温泉と吉野山温泉2ヶ所(2軒)になっている。

吉野山の温泉は、300年の歴史がある。

当時から既に桜の名所であるとともに、大峯山修験道の地として全国的に知られ、ここを訪れる文人墨客や修験門徒が入浴していった。
しかし、修験者が湯治の名を借りて酒色に溺れる者が多く出るにいたり、ついには廃湯となったが、その後も密かに仮設浴場を備えて湯治に供され、そのため「吉野の隠し湯」「内証風呂」と呼ばれた。

吉野山は一本の尾根筋に形成された集落であるが、その東側の谷底に吉野温泉がある。実際に行ってみてそれが分かった。
到着して何気なく上を見上げたら、吉野山の建物群がはるか遠くに見えたからだ。
桜が咲き、太陽が1日照らす吉野山を陽とすれば、谷底、日照時間が短く、華やかな桜とも無縁なここは陰と言える。
吉野山全山が桜花で被われるときも、ここはその喧騒から全く無縁に、ひっそりと佇んでいるのだろう。隠れ宿・隠し湯の趣がいまも色濃く残る。
温泉名 : 吉野温泉