記念碑は紅葉館の近くにあるが観光は省略した。
館内には御馴染みの日本秘湯を守る会の提灯が下がる。
所在地 : 吾妻郡嬬恋村 
温泉名 : 鹿沢(かざわ)温泉
鹿沢温泉 紅葉館 (群馬県)
「雪山賛歌」の発祥の地である鹿沢温泉は、標高1,500mの高所に有り、国の指定天然記念物であるレンゲツツジで知られる湯ノ丸山の中腹にある。一軒宿の紅葉館は日本秘湯を守る会加盟旅館で、レリーフが彫られた内湯が味わい深い。
嬬恋(つまごい)村は群馬県北西部に位置し、浅間山・白根山・湯ノ丸・吾妻山など標高2、000m級の山々に囲まれた高原地帯であり、村の東側を除いた長野県との県境一帯は上信越高原国立公園に指定されている。

この村は苦難の開拓の歴史を経て来たが、年間平均気温が8℃前後の気候を活かして、日本でも有数な高原野菜産地を築いた。
キャベツ、レタス、白菜、じゃがいも・・・特にキャベツは首都圏の需要の80%を賄う大生産地となっている。

また、観光資源にも恵まれ、万座・鹿沢など10ヶ所の温泉、6つのスキー場、天明3年(1783年)の浅間山大噴火の溶岩が固まった鬼押出し園など、四季を通じて観光客・温泉客・スキー客などで賑わっている。

嬬恋村、なんともロマンティックな村名だ。歴史・地理好きな私は調べざるを得ない。
村のホームページには次のような記述があった。

「第12代景行天皇の皇子・日本武尊(やまとたけるのみこと)」の東征中に、海の神の怒りを静めるために愛妻「弟橘姫(おとたちばなひめ)」が海に身を投じました。
その東征の帰路、碓日坂(今の鳥居峠)にお立ちになり、亡き妻を追慕のあまり「吾嬬者耶(あづまはや)」(ああ、わが妻よ、恋しい)とお嘆きになって妻をいとおしまれたという故事にちなんで嬬恋村と名付けられました。」
鳥居峠(左記)付近
新鹿沢温泉
田代湖から信州・別府をつなぐ県道94号線(東部嬬恋線)は、途中、天然記念物・レンゲツツジの群落で有名な湯ノ丸山(2,101m)の東側、標高1、732mの地蔵峠を通過する。
地蔵峠、この名は、かって100体の観音像が道筋に祭られていたことに由来する。
その100番目が鹿沢温泉で終わることから、この温泉の歴史の長さが分かる。

かっての鹿沢温泉には共同浴場の大湯やかなりの旅館が建ち並んでいたが、大正7年の大火で消滅した。
旅館はこの地から4kmほど離れた高原に再建され(新鹿沢温泉)、現在、元の地にあるのは紅葉館のみだ。
鹿沢温泉の紹介記事のトップには、必ず「雪山賛歌発祥の地」と書かれている。嬬恋村が建てた説明版には次のような経緯が記されている。

「大正15年1月京都帝国大学の山岳部が鹿沢温泉でスキ−合宿された。
合宿が終わってから後に第1回南極越冬隊長をされた西堀栄三郎氏、京大カラコルム遠征隊長となった四手井綱彦氏、アフガニスタン遠征隊を勤めた酒戸弥二郎氏、並びに東大スキ−部OB で後にチャチャヌプリ遠征隊長をされた渡辺漸の4名にてスキ−で新鹿沢へ下って宿泊されたが翌日天候が崩れ宿に閉じこめられた。
一行は、退屈まぎれに「山岳部の歌」を作ろうと言うことになり、曲をアメリカ民謡「いとしのクレメンタイン」としこれに合わせて皆で上の句、下の句と持ち寄って作り上げたものであると言う。
(途中略)
今回地元でこれを記念し「雪山讃歌の碑」として、台字を西堀氏直筆にて鹿沢温泉に建立した。
施設名 : 紅葉館(こうようかん) (入浴日:2006.11.7)
紅葉館は日本秘湯を守る会加盟旅館だが、県道94号線沿いにあるため、アクセスの点からは秘湯度は低く感じられる。
特に今回のように群馬県側から訪れた場合は、鹿沢高原の台地にあって、広い通りに旅館が建つ新鹿沢温泉を通り過ぎて間もなく到着するのでその感を一層強くする。
しかし、長野県側からやって来ると両側に2000m級の山々が迫り、標高1,732mの地蔵峠を越えなければならないのでその奥深さが実感できる。

紅葉館は明治2年(1869年)の創業で130年を超える歴史を持つ。
道路側から見る本館は昭和10年建築当時のままで、まるで時の流れが止まっている様な古色蒼然たる外観だ。

館内に入るとその感がますます強まり、狭いロビーにかかっている大時計の針が動いているか確認したくなる
一般の宿泊客は別の感想を持つかもしれないが、温泉好きの年配者には郷愁を感じさせる。かく言う私も同様だ。
露天風呂は無いが、完全掛け流しの内湯・温泉は文句なく素晴らしい。
風呂場はロビーから7,8段下がった場所にあり、半地下のような構造だ。源泉場所に合わせてこうなったとの記述を見かけたので、地形に合わせて造られたものではないのだろう。
浴室はそれほど広くなく、木造の床は湯に晒されて黒く変色している。
檜の風呂はほぼ正方形、詰めて5〜6人くらいが入れる大きさだ。木の温もりが伝わって心身共に心地よい。

自噴泉を加水加温無しで注がれる温泉そのものも素晴らしい。
源泉温度が44.8℃と一見高く思えるが、ほんの少し温めの湯温(私の快適温度)を保っているのは、源泉がよほど近いのだろう。
青味と黒味と乳濁色が微妙にバランスを保った湯は神秘的な色合いだ。
泉質は、
重炭酸土類泉(マグネシウム・ナトリウムー炭酸水素塩温泉)で、とても優しい肌触りだ。老眼鏡をかけていないので気がつかなかったが、湯の華も舞っているらしい。
口に含むと昆布のダシ汁のような味がした。
木造の床・浴槽に神秘的な色合いの湯
階段を下った場所にある浴室前の廊下
すべて木造、味わい深い情緒を醸し出している。風呂場は源泉名を使って「雲井の湯」と名付けられている。
左側に打たせ湯肩に湯を受けて飛沫を吸うとレジオネラ菌に犯される心配があるが、もちろんここでは何の危惧も無い。
壁にはレリーフが彫られている。モチーフはキューピットという解説もあるが、どう見てもそうは思えない。やや薄紫の壁が湯の色にマッチして神秘的な効果を出している。
簡素な脱衣棚だが、これさえなんとなく雰囲気を感じてしまう。
紅葉館は、部屋数18で新館(ち言っても昭和58年築)にはトイレ付きの部屋が8室ある。

料金は最新のガイドブックでは10,650円〜13,800円(平日・休前日共)となっているが、ここのHPが非常に簡単なものなので確認できなかった。

確認・詳細は電話で照会ください。
付録:ケロリン桶
温泉愛好家ならよくご存知の黄色の「ケロリン桶」は、紅葉館でも使われていた。
これは、富山市に本社を置き、資本金5千万円・従業員100名の小さな医薬品会社・内外薬品の販促グッヅで、頭痛・生理痛の薬品・ケロリンで知られている。
銭湯で子どもが蹴飛ばしても、腰掛けてもビクともしないので「永久桶」と呼ばれているそうだ。
東京オリンピックの前年(昭和38年・1963年)、営業スタッフが提案したのがきっかけ。その後、全国の銭湯・温泉・ゴルフ場で採用となり、木製桶と比べて軽く、衛生的等のメリットもあって延べ200万個が販売された。
高・中級旅館(宿泊料金上の)には置いてないが、温泉ファンには御馴染みのグッヅだ。
ケロリン桶は全国の「ロフト」「東急ハンズ」などで販売されているが、代理店の睦和商事(電話:03−5695−0591))に電話すれば、一個1,365円で購入できる。他にバスタオル・フェイスタオルなども有り、トータル料金が2,000円を超えると送料が無料になる。
因みに関東型は関西版より一回り大きく100g重い。
この桶の成功の為ではなかろうが、提案した営業スタッフが現社長に就任しているのが愉快だ。
詳しくは内外薬品のHPのケロリンファン倶楽部参照。
日本温泉協会の完全掛け流しの証。
6項目の風呂の評価がすべて5星だったが、この評価の風呂は(私の記憶違いでなければ)全国で17ヶ所しかない。
住 所 群馬県吾妻郡嬬恋村田代681
電 話 0279−98−0421
交通機関 上信越自動車道東部湯ノ丸ICから17km
JR吾妻線万座・鹿沢口駅からJRバス鹿沢温泉行で35分
施 設(日帰り) 予約すれば手打ち蕎麦を食べられる。ロビー休憩 駐車場(20台)
宿 泊 18室(内T付8室) 1泊2食付1万円程度から14,000円前後まで
料金は変更されるので要確認 (下記HPは簡単なもので役に立たない)
泉質 重炭酸土類泉(マグネシウム・ナトリウムー炭酸水素塩温泉
適応症 不記載(理由は「温泉の基礎知識ー温泉の効能」参照)
日帰り入浴時間 10時〜16時(要予約) 宿泊者は24時間
定休日 不定休
入浴料金 大人500円
入浴施設 男女別内湯各1
浴室備品 日帰りの場合はシャンプー、ボデイソープ無し(宿泊の場合は恐らく準備されるのだろう)
浴室内にはカランは無く、打たせ湯を利用。
観光スポット 湯の丸高原(特に6〜7月にかけての天然記念物・レンゲツツジが見物)、百体観音、つつじヶ丘牧場
お土産・食事 車ならば嬬恋村のキャベツ、レタス、じゃがいも等が喜ばれる。
土産店・食事処は新鹿沢温泉にあったかもしれないが調査せず不明。
近くの温泉 新鹿沢温泉、嬬恋温泉、奈良原温泉、角間温泉、高峰温泉
嬬恋村HP
鹿沢観光協会HP
紅葉館HP
http://www.vill.tsumagoi.gunma.jp/
http://www.kazawaonsen.com/
http://www3.ocn.ne.jp/~koyokan/home1/ (非常に簡単な内容)
雑記帳 温泉好きには高評価の紅葉館の風呂だが、温泉慣れをしていない方が宿泊された場合はには、ここの浴室の設備の無さに戸惑うかもしれない。
データは変更されている可能性もあります。お出かけ前にご確認ください。
一軒宿の紅葉館