富士山に次ぐ北岳(3192m)・間ノ岳(3189m)等の山々が連なる南アルプスの東麓直下、富士川支流の早川に沿って秘湯・奈良田温泉が湯煙を上げている。
宿泊したのは日本秘湯を守る会の会員旅館・白根館だった。
早川町は山梨県の南西部にあり、日本で最も人口の少ない町である(2000人弱)。
北部・西部を南アルプス(赤石山脈)、東部を櫛形山系、南部を身延山地に囲まれた山間地域だ。
林野が96%を占め、平地はほとんどない。
町の中央を町名の由来である早川(富士川の支流)が南北に貫通している。
この川に沿って通じる県道37号線(南アルプス街道)が、町外へ通じる唯一の道となっている。
地図で見ると、国道52号線増穂からと夜叉人峠経由からの細い道がある。しかし、一方は冬季閉鎖で、しかも普通乗用車ではむずかしく、もう一方はタクシーなどしか通れないので、身延周辺から北上する37号線しかルートはない。
奈良田ダム湖周辺。
「南アルプスの秘境」「陸の孤島」「異風な方言の島」「焼畑農業日本最後の村」「民俗学の宝庫」などは奈良田を形容する言葉だ。
5月7日、東京の実家を9時に出発。東名の御殿場ICで降りて、東富士五湖道路を利用して河口湖へ。到着してから散策、湖畔で食事。
Cafe IL BACCO
TEL:0555-73-6686
住所:富士河口湖町小立1204−2
10時30分〜21時30分
湖面から小高いところにあり、広いテラスで優雅にお茶を。湖畔のテーブル席からは、河口湖だけでなく富士山も眺められる。
写真はジューシーなフライドチキンとパラペーニョのサンドイッチ。(1230円)。
年配者は1ピースで十分な量だ。
コーヒー・ケーキ各450円。P10台
河口湖を出て西湖・精進湖・本栖湖を経て身延山・下部温泉方面へ向かう。
日本を震撼させた事件により知れ渡った村を通過する。
平安時代に流出した溶岩の上に常用樹が根付いた青木ヶ原樹海を展望できる紅葉台周辺。
下部温泉街。写真は岩盤から温泉が湧き出る岩風呂で有名な「本湯太市館」(クリックすると温泉たまこさんのサイトへ)。ここの公衆浴場に入浴
至近に身延山久遠寺(日蓮宗総本山)があるが、階段が多くパスし、奈良田温泉へ向かう。県道37号線(南アルプス街道)は、予想に反して上下2車線で危険は全くない。
中央自動車道甲府南ICから奈良田温泉まで約100kmだ。
温泉ガイドブックに登場する人気の西山温泉・慶雲館を通過する。平日でも宿泊料が25,000円からと高い。風呂は完全掛け流し。立ち寄り湯が可能〔11時〜15時、1000円(要予約)〕
2005年8月にオープンした日帰り施設、西山温泉・湯島の湯に立ち寄る(記事準備中)。
所在は左の慶雲館の手前にある。西山温泉から奈良田温泉は数分の距離だ。
奈良田温泉の名は、早い時期から「日本秘湯を守る会」の図書で「南アルプスの山深い秘境の宿」として、紹介されていたのを承知していた。、
地図で見たら、富士山に次ぐ日本第2の高山・北岳を盟主として、3000m級の名峰が連なる赤石山脈の東側直下。
そこへのアクセスは、県道37号線一本(他にある2本の道は、一般車両では実質通過不可)。
一目見て文句ない秘湯のロケーションだった。
その後、すぐそばの西山温泉とともに、、その秘湯度と完全掛け流しが注目されて、あちこちの温泉ガイドブックに紹介されるようになり、機会あれば是非行きたいと思っていた。
奈良田温泉への県道37号線は、1.5車線の隘路を想像していたが、これがまったくの見当違い。
南アルプスの前衛の山々の間をぬって流れる早川沿いの県道は、快適な2車線道路でスリルを味わう部分はゼロ。逆にガイドブックで言う「秘湯中の秘湯」に行く期待感がしぼんでしまったくらいだ。
走りながら、山梨県の実力政治家を思い浮かべ、政界のドンだった金丸信に行き当たった。
富士川の支流、早川に沿う街道を北上していくと小さな温泉を幾つか通り過ぎ、やがて西川温泉に到着した。
ここには、慶雲荘という人気の温泉旅館があり、当初は立ち寄り湯を考えていた。
が、あまりの堂々たる建物だったので、少し怖気づき、かわりに昨年8月にオープンした近くの日帰り施設に立ち寄った。
ダム湖を過ぎて到着した奈良田は、早川沿いの最後の集落で、この先は道幅が狭くなる。
さらに北上すると、一般車両通行禁止の南アルプス林道となり、北岳の北を巻いて信州・高遠に出る。
奈良田は、東西南北に山々が迫り、川の西岸には、、南アルプスの前衛の山が迫っている。
ダム湖に流れる早川の斜面に、一軒宿の白根館を中心に僅かな家が集合している。
そんな小さな集落にもかかわらず、斜面の一番奥に日帰り温泉施設の「奈良田の里温泉」があり、露天風呂はないが、柔らかな温泉が掛け流しになっている。
奈良田温泉に来たら、是非立ち寄ってみたいところだ。
白壁と黒の木材を組み合わせた和風モダンな本館。
山小屋を思わうる素朴なロビー
木の札がカギになる下駄箱
ダム湖に早川が流れ込む開けた河原の前、階段を上がると、玄関先に日本秘湯を守る会のトレードマークである提灯が左右にぶら下がっている。
チェックインは何と1時(チェックアウトは午前10時)、とても嬉しいサービスだが、冒頭の通りあちらこちらに寄ったので3時過ぎになった。
館内は素朴な山小屋風の帳場と小さなロビー、ご主人と猟銃でしとめた大きな熊の写真が飾ってある。なんとなく男臭い雰囲気で、私達のバッグを持ったご主人自らが部屋に案内してくれた。渋い2枚目である。
部屋は全部で13室(T付き4室・BT無し9室)の小さな旅館だ。宿泊料金は新館のトイレ付きが16,500円(平日は15,500円)、トイレ無しが12,000円(同11、000円)である。
私達が予約したのはトイレ付き(ウオシュレト)、部屋からは早川が見渡せる。
8畳の和室だが、4畳半程度の板の間があり、狭さは感じられない。
風呂は、内湯2ヶ所と露天風呂2ヶ所の4つ。
時間で男女が変わるので、宿泊客はすべての風呂に入浴できる。
いずれもそんなに大きくないが、6人から8人くらいが一度に入れる大きさ。
部屋数がわずか13室、そのうえ団体客は取らないので、たとえ満室でも余裕のある規模だ。
温泉は、地下500mから汲み上げた「含む硫黄ーナトリウムー塩化物泉」で、天候などによって、色が透明・緑色・白濁色に変わるという。
源泉温度が50度を超えるので、冬はそのまま掛け流しにするが、それ以外の季節は、加水することなく、熱交換処理で温度を下げる。
湯量は130リットル/分で、これを4つの浴槽に配分している。
パンフレットでは上記の湧出量だが、HPではこの半分程度の湧出量になっており、もしかしたら2つの源泉を持っているのかもしれない。
わずかな硫黄臭、皮膚への感触は上質なヌメリ感があり、湯上り後の肌はとてもなめらかになる。
また。白と黒の湯の華が舞っていて、いかにも天然の温泉を感じさせる。
銀河の湯と呼ばれる2つの露天風呂は、それぞれ秘湯の湯宿らしく素朴な風情を醸し出している。
決して、展望が大きく開けているわけではないが、 周囲に南アルプスの前衛の山々が重なり、山の奥深さを感じさせる。
この日は激しく雨が降っていたので、それらの山々が煙り、山水画のような幽玄な世界の中で入湯を楽しんだ
気温などによって湯の色がかわるそうだが、この日は僅かに緑色に見えた。
内湯は2つとも似たような大きさだが、風呂の外も内も贅沢な桧造りだ
風呂は2つに仕切られ、片方が温め。これが低温の湯を好む私には、なんとも快かった。
夕食・朝食とも食事処で取る。案内された場所には、自在鉤がかかる席が4ヶ所設けられている。
冬場はこれに鍋が掛けられるのだろう。
ここの部屋は、どうやらT付きの部屋に宿泊した客用で、他の客は大広間に夕食が用意されていた。
夕食は山奥の旅館に相応しく、猪・鹿・川魚・山菜・こんにゃくなど食材とする、素朴だが滋味のある料理だった、
自在鉤がかかるテーブル。
温泉で作った小豆粥の朝食。
山菜五種
寒干し大根などの煮物
こんにゃくの刺身
鹿刺し
イノシシ陶板焼き
ヤマメ
揚げ蕎麦掻
山菜天麩羅
内湯は2つとも総桧造りの豪華さ。窓からは南アルプスの前衛の山々が見える。
8畳に4畳半くらいの板の間に炬燵が置かれてある。
早川が目の前を流れる白根館
奈良田の集落
日本秘湯を守る会のシンボル提灯。
日曜日・2人1室T付き 1人16,500円
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