意見1(日本の旅館の視点から否定的) 宿泊料金などサービス(役務)の対価は、サービスを受けた(提供した)あとで支払う(受け取る)というのが、基本的な商慣習になっています。 美容室や理髪店で、髪をカットされる前に料金を支払うことは普通はありません。 電気製品その他の修理を依頼する際に、何の修理も受けていないのに前金を要求されることは普通はありません。 タクシーの乗車時に、時間貸切などの場合を除いて料金を先に払えと言われることはありません。少なくとも日本国内では。 いずれも料金体系はだいたい予め決まっているものですが、サービスを受ける前に金を払えと言われることはまずないでしょう。 これは決して法律で決められたルールではありませんが、サービスの対価は受けたサービスに顧客が納得した上で支払われるべきもの、という発想が根底にあるのです。 サービスの内容というのは本来個々の顧客により異なるもの(サービスの不均質の特性)という考え方に則った慣習であり、また顧客は適切なサービスを受けた場合は必ず対価を支払うはずだ、という性善説に立った慣習でもあります。 しかし世の中にはサービス料金を前払いしているものもたくさんありますね。 鉄道・バス・航空機など公共輸送機関の運賃・料金、映画やコンサートのチケット、郵便料金や金融機関の手数料など。 サービス料金を前払いするのは、おおよそ次の二つの理由によるものと考えられます。 @不特定多数の大量の顧客に定型的で均一的なサービスを提供する場合の、事務処理上(迅速化・効率化)の理由。 Aいわゆる「踏み倒し」の予防。サービス提供後に客が代金未払いで逃げないようにするための防衛的措置。 この二つの理由のうちのいずれか、あるいは両方です。 @は例えば映画・コンサートやテーマパーク、スポーツ観戦などイベントのチケットを考えれば分かりやすいでしょう。 もしこれが料金後払い方式だったら、イベント終了後に客が支払いのため長い行列を作って主催者も客も大変な時間を浪費することになります。また内容がつまらなかったから金をまけろの支払わないのと言われたら、商売するほうは堪ったものではありません。 鉄道など公共輸送機関も、すべての客が降車時に運賃等を精算していたら客と会社双方の大きな負荷となりますし、無賃乗車の温床になります。 地方の鉄道やバスでは利用者が少数のため降車時後払い方式を採っていることもありますが、利用者が多い所では無理です。 大量の顧客からの料金を滞りなく受け入れるための事務処理上の都合、および不正防止、というのがサービス料を前受けする大元の理由です。 飲食店の場合は代金前払い(食券方式など)の所と後払いの所と両方ありますけれど、どちらがよりフォーマルか、きちんとした料理店ならどちらの支払い方式を採っているかは明らかでしょう。 先に金を払う飲食店というのは、だいたいチェーンのファストフード店とか立ち食いソバ屋とか、あるいは学食とか社員食堂とか、大量の客に定型的な食事を提供する所に限られます。個々の客に合わせて一つ一つきちんと料理をつくる所であれば、ほぼ例外なく後払いにしているはずです。 ホテル・旅館の宿泊料金の支払い方式も、飲食店の場合と同じことがいえるでしょう。基本原則はチェックアウト時の後払いです。 一流と呼ばれる日本旅館で、チェックインの時に料金を先に請求されることなど(旅行代理店経由やネット予約等の場合は少し別ですが)、まず絶対にありません。 |
●前払いの目的
フロントスタッフが「当日予約なので前払いをお願いします」とそれ以上の説明も無く、至極当然に要求、非常に不快に思い、日頃のんびりした家内が、珍しく怒髪天を衝く状態で「私たち信用されてないの!?と叫んだ。
手渡した30、000円強の現金と引き換えにようやくキーを渡してくれた。
今回、白良荘の記事を書く際に、インターネットで「当日予約の場合の前払いは何故か」を検索すると、次の様な答えが見つかった。
意見2(スキッパーの実情から肯定的) 旅行会社経営しています。 |
@ホテルにおける事務処理上の迅速化・効率化の理由
例えばビジネスホテルでは、朝のチェックアウトの混雑を回避するため、前日予約に関係なく前払いにしている所が多い。
私も現役の頃、前払いでないビジホでも朝のチェックアウトを早くするために、自分から前払いを頼んだ。
A「スキッパー(踏み倒し)」の予防。宿泊客が代金未払いで逃げることを避けるための予防措置。
この二つの理由のうちのいずれか、あるいは両方が前払いの目的である。
*白良荘はビジネスホテルでなく、客はビジネスマンでなくて観光客なので、前払いは精算事務の効率化・迅速化のためでなく、当日予約の宿泊客に多いと言われる「スキッパー(宿泊料踏み倒し・食い逃げ)」予防のためだ。
*一流日本旅館ばかりでなく一般の旅館では性善説に立ち、当日予約でも前払いを要求するケースはほとんど無いようで、私自身も170ヶ所の旅館(20回程度当日予約)で要求されたことは無い。
前払いはどうやら欧米商慣習(性悪説)に基づくホテル経営からくる制度と思われる。
(数10年前、駐在中に同行した本社の社長がブラッセしたヒルトンにチェックインの際に前払いを要求されたケースにぶつかり、社長の心情を思って冷汗をかいた)
*白良荘を経営するグランビスタ ホテル&リゾートは、既述のように全国にシティホテル・ビジネスホテルを多数展開しており、前払いシステムは会社の文化になっているのだろう。
また、傘下ホテルの合計では、スキッパー被害も無視できないほど多いのであろう。
これによって観光ホテル(100室の内、99室が和室なので実質的には温泉旅館)ではあるが、白良荘にも前払いシステムが当然のごとく導入されたと思われる。
*事務的とはいえ、スキッパーの恐れありと見られたので、心情的によろしいわけがない。
しかし、当日予約にスキッパーが多いようであり、三井グループが経営母体の企業文化からすれば、日本旅館とは異質のカルチャーを有している。
また社会的にも、前払いは全く不快でない、かえって合理的という意見も多いので、ここは寛容の精神で行くことにした。
意見3(ホテルの場合、当日予約に関係なく前払いやデポジットを要求される) ホテルで宿泊代を前払いするのは、大きく次の二つのケースです。 (1)多くのビジネスホテルの場合、宿泊料金はチェックイン時に前払いです。チェックアウト時に飲み物代などがあれば精算する方式です。 これは料金取りはぐれの防止もありますが、大量の客が特定の時間に集中してチェックアウトするビジネスホテルでは、チェックアウト時に精算していたのでは客とホテル双方にとって時間のロスが大きすぎるのが主たる理由です。 (2)ビジネスホテルよりランクが上の高級シティホテル等では、チェックイン時にデポジット(前受金)と称して宿泊料金と同額以上の金を預かることがあります。チェックアウト時に精算され、剰余分については返金されます。 これは明らかに代金踏み倒しの防止策で、客に対する性悪説に立っています。 強気の商売といえばその通りで、あまり愉快な気持ちのするものではありませんが、ホテルの側もこのように自衛せざるを得ないほど大きな被害に遭っているのでしょう。 あまり一般化してほしくはないですが、そういうご時世なのでしょう、デポジットを要求するホテルは増える傾向にあります。 |