施設名 : 一の俣大衆浴場 (2007.4.8) 
所在地 : 下関市
温泉名 : 一の俣(いちのまた)温泉 
  一の俣温泉 大衆浴場 (山口県)   

廃 業

関門海峡の北岸に面し本州と九州を結ぶ下関は、中世から陸・海交通の要衝で、いろいろな歴史上の出来事の舞台ともなった。

源平最後の戦いとなり、平家が滅亡した壇ノ浦合戦(1185年)、真偽は定かではないがかの宮本武蔵と佐々木小次郎が戦った巌流島、北前船の寄港地として繁栄した港、そして幕末には高杉晋作が中心となって組織したした奇兵隊の活動拠点となり、下関戦争の地となった。
現在の下関は港湾商業都市として、県庁所在地の山口市より多い県下第一位の人口、経済面でも県西部(旧長門国)の中核となっている。

さらに、2005年2月、周辺の菊川町・豊田町など4町との合併により市域を大きく拡げた。
一の俣温泉のある(旧豊浦郡)豊田町は下関市街から北へ30kmほど、町一帯が県立公園に指定され、500m前後の山に囲まれた丘陵地帯で、豊田湖周辺は源氏ホタルの生息地として知られる。

関門海峡を跨ぐ関門橋を渡って下関から門司へ。
奈良から九州へ向かう途中の中継点として、前回は湯田温泉に宿泊したが、今回は同じ山口県だが、更に西に位置する一の俣温泉に予約を入れた。
一の俣温泉は、明治時代の末期、地元の人によって掘り当てられたもので、粟野川支流の一の俣川沿い、のどかな山里に4〜5軒の宿が点在する静かな温泉地だ。

中継地としてここの他、近くにある川棚温泉も候補に挙げたが、
・自然に恵まれ、近くにホタルが舞う清流が流れている。
・pH10に近いアルカリ性のため、ヌメリ感の強い単純硫黄泉が評判を呼んでいる。
・ガイドブックに「映画のロケに使えそうな共同浴場がある」の記述があった。
等の理由で一の俣温泉を選んだ。

この日、奈良を早立ちして、中国自動車道小月ICで降り、いったん響灘に近い大河内温泉に出て入浴、そこから山間部を通って内陸部に進み一の俣温泉にやって来た。

一の俣川を跨ぐ朱塗りの橋。向こう側が宿泊した一の俣グランドホテル。
旅館にチェックインする前に、宿泊する一の俣グランドホテルの前を通り過ぎて、その「映画に出そうな共同浴場」にやって来た。

それは、菜の花が満開の一の俣川沿い、小さな民宿風の「もとゆ旅館の隣にあった。

古色蒼然たる建物の横に、大きな文字で「一の俣温泉大衆浴場」と書かれたド派手な看板が下がっているのが目に付く。
「大衆浴場」・・素晴らしい! 先ずこの名前に惹かれる。

なんだか人気がなく、営業しているかどうか定かでないので、遠慮気味に中に入る。
年代物の木造下駄箱が設置された玄関付近には誰も見当たらず、「すみません」と声をかけたが、しばらく経っても誰も出てこない。
目の前に風呂場があるのは分かったので「後で払おう」と決めて勝手に浴室へのドアを開けた。
木造脱衣箱の扉の半分が無くなっているのはともかく、浴室に入って茫然自失となった。
なんたるオンボロ!

普通、地元密着の公衆浴場を表現する場合、「素朴な」「鄙びた」」「歴史を感じさせる」と言った美辞を使うが、ここにはこれらの表現は絶対使えない。
思いついた言葉は、ずばり「オンボロ」だった。

先ずは、浴室の床が地震による地割れのように断裂が走り、間もなく浴室全体がすっぽり抜け落ちそうだ。
その上に浴槽の中のタイルがあちこちで剥げ落ちて、底にも亀裂が入っている。
他の方のHPでは、地元の人が「あそこの風呂に浸かると尻を怪我するから気をつけないと・・」と注意されたことが面白おかしく書かれていた。
でも、その通りだったのが怖い。
むき出しの天井を見上げると、細い鉄骨が錆付いて赤く変色していて、塩ビの波板を通して外の光が入ってくる。

それでも、「まろやかな温泉が浴槽に満たされていた」、と描写出来ればいいが、これが書けない。
湯は湯舟の半分程度までしか溜まっておらず、半身浴で我慢するか、あるいは寝湯スタイルに体を横たえないと全身が浸かれない。

底から湯が洩れているのか、はじめから半分しか入れてないのか考えているとき、地元の人がやってきた。
さっそくこのことを聞いたら「ここは客が少ないから、半分しか入れないんだ」と話してくれ、さらに、「山口県で一番ボロイ温泉だ」、と豪快に笑い飛ばした。
それから蛇口をゆるめると、温泉を景気よく注ぎ始めた。
どうやら、客が気の向くままに温泉を注ぎ足すシステムになっているらしい。
果たして、掛け流しになるまで湯を足したかどうか確認する前に、ここを脱出した。

あまりのボロさに圧倒されて、アルカリ性単純硫黄泉の観察を忘れたが、他のサイトを拝見すると、どうやらヌルヌル系の上等な感触らしかった。
再び玄関に出ると、「料金は奥で払ってください」の貼り紙に気がついた。
ギシギシ悲鳴を上げる廊下を通って奥に行くと、お茶の間の炬燵に体を入れて転寝している年配の男性を見つけた。
何回か声をかけたらようやく目を覚ましてくれて、所定の300円を受け取ってくれた。

すぐ前の畳の部屋には、客と思われる男性数名が寝転がっていて、どうやらそこが休憩室らしかった。

ここは公衆浴場と紹介されているが、公営ならば、いくら町の財政が逼迫していてもこの状態で放置する訳はない。

個人の持ち物か、温泉組合のようなものが管理しているのか、そこら辺の状況はネットで検索しても分からなかった。
自分を含めて、古びた湯屋・風呂を好む傾向が強いマニアックな温泉好きには、話の種として特薦の風呂だが、それ以外の方にお薦めしたら絶対お叱りを受ける。
その方たちには、私は入浴しなかったが隣の「もとゆ旅館」(相互リンクさせて頂いている”しおりさん”の「秘境温泉神秘の湯参照」)か、私が宿泊した一の俣温泉グランドホテル(後日掲載)で入浴することをお薦めする。


尚、既述の「映画のロケに使えそうな共同浴場
が果たしてここなのか自信がないことをお断りしておく。
映画に出るような温泉とは、どうしても思えないので。
先に入浴されたプースケさんからお借りした女湯
赤さびた鉄骨に塩ビの屋根
使われていない銭湯スタイルのの番台
ピンクのタイルと亀裂の入った床と湯船。湯は半分まで。
陥没しそうな床と剥げたタイル。
看板だけが妙に目立つ「大衆浴場」
温泉サイト仲間のリーダーさんプースケさんが妙に嬉しそうに推薦してくれた「一の俣温泉大衆浴場」は、想像を絶する凄い風呂だった。
住 所 山口県下関市豊田町一の俣
電 話 0837−68−0020 (看板に表示された電話番号を転記)
交通機関 中国自動車道小月ICから国道491号線等で約28km
又は同美祢ICから30km
JR山陰本線小月駅からサンデン交通バス西市行きで30分、西市でブルーライン交通バス滝部行きに乗り換えて40分、一の俣下車すぐ
施 設(日帰り) 休憩室、駐車場有り(10台程度)
宿 泊 不可
泉 質 アルカリ性単純硫黄温泉 
適応症 不記載(理由は「温泉の基礎知識ー温泉の効能」参照)
入浴時間
4月〜9月 10時〜20時  10月〜3月 10時〜19時  
定休日 だぶん無休だと思うが確認を忘れた。
入浴料金 1時間以内・・・大人300円  小人(小学生以下)200円
それ以上だと大人500円 小人300円
入浴施設 内湯男女各1
浴室備品 シャンプー類・ロッカーとも無し
観光スポット 地元:角島・海響館(下関市立水族館)・豊田ホタルの里ミュージアム・梨狩り・豊田湖
下関市・秋吉台・秋芳洞、萩市、仙崎(金子みすず記念館)、青海島
お土産・食事 一の俣温泉グランドホテルで昼食・土産可
近くの温泉 大河内温泉・川棚温泉・滝部温泉・俵山温泉長門湯本温泉泉、湯谷温泉・へき温泉
下関市HP
下関市観光HP
http://www2.city.shimonoseki.yamaguchi.jp/
http://www.tip.ne.jp/stca/
雑記帳 ここよりボロい現役の温泉があったら、是非、ご一報下さい。
データは変更されている可能性もあります。お出かけ前にご確認ください。