神秘的な鰻池はカルデラ湖
駐車場の隅にあった地熱蒸し器。数多くあり、地元では「スメ」と呼んでいる。写真のスメは、少し前までもっと右手にあったが、つい最近、噴気する場所がここに移ったそうだ。
マグマが地表直下までせり上がっているのでは、と思ってしまうほど、至る所で噴気が舞い上がっているのだ。民家の土台横、庭の一角、駐車場など、場所を選ばない。
鰻温泉も指宿温泉に含まれているガイドブックもあるが、指宿市のホームページには掲載されておらず、ここでは独立した温泉として扱う。
鰻温泉は、指宿の市街地から西へ6,7kmほど走った先にある鰻池の湖畔にある。
池と言ってもかなり大きく周囲は4km、もともとは噴火口で断崖に囲まれ水深61メートルもあるカルデラ湖、濃いブルーの湖面はとても神秘的だ。
鰻温泉は、その鰻池に面した素朴な山里の狭い斜面に、僅かな民家と数軒の民宿がある小さな集落だ。
しかし、この鰻地区に入ると、温泉好きにはたまらない風景が目に飛び込んできて、間違いなく感動することになる。
指宿温泉・市営元湯温泉
今回の九州の旅(中国地方2泊・九州7泊)で、アクセスが不便な指宿を訪れるかどうか迷った。
しかし、40年前の新婚旅行の地だったこと、また、特に2つの温泉(二月田温泉・殿様湯とここ鰻温泉)で入浴したかったことが決め手になって、指宿温泉に宿泊することにした。
指宿温泉は、ハイビスカスや椰子の木が茂る南国ムードの温泉地だ。
古くは「湯豊宿(ゆぶじゅく)」と呼ばれていたように、市内どこでも1m掘れば温泉が湧く、と言われているほど湯量が豊富だ。
源泉は800ヶ所、湯量は1日12万トンもあるそうだ。
旅館・ホテルは大小40軒弱ほどあり大型温泉地と言っていい。
一口に指宿温泉と言っても範囲が広く、温泉街の中心である摺ヶ浜の他に、数キロの範囲に点在する湯之里・二月田(追って掲載)・弥次ヶ浜等の温泉を含む。
施設名 : 区営鰻温泉 (入浴日:2007.4.14)
指宿市中心部から南西へ5kmほど、元は噴火口だった鰻池の湖畔、至る所で噴煙が舞い上がる鰻温泉の公衆浴場で入浴した。
今回の九州旅行では沢山の温泉・風呂で入浴したが、「最も印象に残った温泉ベスト5」にランクインする楽しい旅の思い出をここで作れた。
日本百名山の1つ、開門岳を池田湖から撮影
鹿児島県薩摩半島の最南端に位置する指宿市は、東は錦江湾を隔てて大隅半島と対峙し、南は東シナ海に望む風光明媚で観光資源に恵まれた街だ。
中央部には九州一の大きさを誇り、体長が2mを超える大鰻が棲み、正体不明の生物(ネス湖のネッシーにもじってイッシーと呼ばれる)が目撃されている池田湖がある。
また、南西部には標高924mの開聞岳が、別名・薩摩富士と呼ばれる美しいコニーデ型の山容を見せ、すぐ側にはトロピカルムード漂う長崎鼻があって観光客を集めている。
さらに市域全体が霧島火山帯に属していて、世界的に珍しい地熱を利用した「砂蒸温泉」で知られる大型の温泉地・指宿温泉が湯煙を上げている。
池田湖のイッシー
南国らしい街路樹
長崎鼻パーキングガーデンからの開聞岳
共同浴場の受付で売っていた温泉卵。
大きな卵5個(2つ食べた後の写真)で150円は安い!
鰻区が管理する共同浴場
裏側の源泉風景
データは変更されている可能性もあります。お出かけ前にご確認ください。
「西郷どんゆかりの湯」の文字
江戸時代後期の古書にも記載されている鰻温泉には、1874年(明治7年)、征韓論が決着して下野した西郷隆盛が1ヶ月ほど滞在している。
1901年(明治34年)には公衆浴場が開設され、現在の建物は平成9年に完成したものだ。
小さな集落の中心にあり、瓦屋根の素朴な建物には赤と青の暖簾が懸かっている。
背後に周囲が白茶けた源泉があって噴気が舞い上がっているが、ここだけでなく周辺のあちらこちらでも白い煙が吹き出ていて壮観だ。
受付は左手にあり、気のいいオバサンが料金200円を受け取ってくれた。
脱衣所は簡素だが清掃が行き届いていて気持ちいい。
浴室と楕円形の風呂はともにタイル張り、公衆浴場にありがちな暗さやジメジメ感がなく、ここも清潔感があって快い。
泉温が高温なので加水して掛け流しにしている。
泉質はpH6.4の硫黄泉。硫黄臭がして、透明だが僅かに黄緑色がかっているようにも見えたが、タイルの色のせいだろう。
風呂の温度は体にジーンとくる熱さで、43〜44℃くらい。私には少々熱かったが気合を入れてしばし上等な湯に浸かった。
指宿温泉唯一と言われる硫黄泉。
6,7人が一度に入れる大きさ。
清潔な脱衣所
女性は前方の家に住んでいるお年寄りと話していた。どなたか、ご存知の方がおられたらご一報下さい。
頂いた本場の薩摩芋。ホクホクして本当に美味しかった。素晴らしい旅の思い出になりました。
風呂から上がって駐車場に戻ってきたら、地元の中年の女性が近寄ってきて、(車のナンバーを見て)、「遠い所から来てくれたのね〜。これ持っていって。」とスメで蒸したばかりの本場のサツマイモを下さった。
お礼の葉書でも書こうと思って、住所を聞いたら「鰻の思い出にして」とおっしゃって立ち去ってしまった。
ほのぼのした気持ちになって、「鰻のこと忘れませんよ」と女性の背中に心の中で呼びかけた。
掛け流しの浴槽、湯は少々熱めだった。