施設名 : 藤三(ふじさん)旅館 (入浴日:2007.5.9)
花巻市は人口73,000人、岩手県中央に位置する中核都市で、花巻空港、東北新幹線、東北自動車道などの高速交通が集中する要衝の地だ。
市域の東部には北上川が流れ、約60%が山地だが、その他は肥沃な北上盆地に属する。
花巻市のホームページを開くと、観光・温泉の他に、郷土が生んだ作家・宮沢賢治や彫刻家・高村光太郎の縁の地などを観光資源としてPRしている。
花巻市縁の人物として、もう1人の「賢治」がいる。
日本の黒幕・政商と言われた国際興業の創始者で、ロッキード事件の公判中に亡くなった「小佐野賢治」である。
一時は花巻温泉のホテル・旅館を買占め、花巻空港は、そこへの客を運び込むために国に働きかけて開設させた、という噂があったくらいの実力者だった。
岩手県を代表する湯どころ花巻温泉郷は、北側、台川沿いの花巻・台温泉と豊沢川沿いに湧く大沢・鉛・渡り・松倉温泉・志戸平温泉などから成る。
温泉ガイドブックによっては、全部を括って「花巻温泉郷」と称したり、前者を「花巻温泉郷」・後者を「南花巻温泉郷(地元では南花巻温泉峡と称している)」と分けてあるものもある。
2回目の東北長期遠征の宿泊候補として、100室を超える大型旅館・ホテルが建ち並ぶ花巻温泉(台温泉からの引き湯)には興味がなく、「台温泉」「鉛温泉」「大沢温泉」を宿泊候補に上げていた。
最終的には、家内が気に入っていた大沢温泉再泊とし、鉛温泉には立ち寄ることにした。
宿泊する大沢温泉を通過して北上すること数キロ、南花巻温泉郷の最深部に鉛温泉がある。
鉛温泉の一軒宿「藤三旅館」の創業は1942年(昭和17年)、当時のままの木造3階建本館はなんともレトロである
藤三旅館に立ち寄ったのは、偏に温泉通には知られ、数多くのガイドブックで紹介されている混浴の立ち湯「白猿の湯」で入浴したかったからだ。
古びたロビーの片隅にあるフロントで日帰り入浴を請うと、スタッフが笑みを浮かべて応対してくれた。
こちらから頼まないのに宿のパンフレットまで手渡してくれて、「次回は是非ご宿泊下さい、お待ちしています」と言い、それから風呂場まで案内してくれた。
ここまで日帰り客を暖かく応対してくれた宿はこれまでに1軒だけ、なんとも嬉しかった。
因みに、その1回とは、佐賀県の嬉野温泉・大正屋。
高級旅館にもかかわらず、日帰り入浴にも親切丁寧に応対してくれて、ここでも「次回は必ず泊まるぞ」と心に決めたものだ。
アンティークなコーナー
温泉通には知られた藤三旅館の「白猿の湯」だが、ここに入ると3つのことに驚く。
1つは、浴室が3階相当の吹き抜けになっていて、天井がはるか上にあることだ。
これほど天井が高い湯屋は見たことが無い。
2つめは、入口から階段を20段ほど下った先にある風呂は、岩盤をくり貫いて造られ、深さが1.25mもあることだ。
身長1m76cmの私の胸くらいまでの深さがあるので、当然のことながら立ち湯となる。
身長が低い人は、風呂の縁に掴って入らないと溺れることになる。
3つめは湯口が無いことだ。即ち50度を超える温泉(単純泉)が、足元の岩盤から湧き出ているのだ。
(湯舟の湯の温度は42〜43度位、熱めに感じられた。)
温泉好きには垂涎ものの風呂で、誰しもが感動するだろう。
尚、白猿の湯の全貌写真は、宿のHPをご覧下さい。
「白猿の湯」の名の由来は、今から600年前、ここの宿主・藤井家の先祖が、白い猿が桂の木の根元から湧き出す温泉で傷を癒していたのを発見したことに由来するそうだ。
この風呂は混浴だが、女性にはかなり入りづらい。(温泉たまこさんのHP、しおりさんのHP まぐぞーさんのHP)
1日3回の女性専用タイムが設定されているので、混浴を嫌う方は、この時間帯を利用すれば心置きなく入浴することが出来る。
@午前8時〜9時 A午後2時〜午後3時 B午後7時〜午後8時30分
日帰り入浴は、午前7時〜午後9時(受付は午後8時30分)までで、料金は700円(子供500円)である。
尚、独立した脱衣室は無く、風呂の脇に脱衣棚がある。
● 白猿の湯
● 桂の湯
温泉成分が作った湯縁と風呂の文様が美しい内湯と露天風呂。
実は、豊沢川が目の前を流れるもう一つの露天風呂があったが、私はこれに気がつかず入浴しなかった。その風呂の写真は、温泉サイト仲間・Mr.リーダーさんからの頂き物。
データは変更されている可能性もあります。事前にご確認ください。
住 所 |
岩手県花巻市鉛字中平75−1 |
電 話 |
0198−25−2311 |
交通機関 |
東北自動車道花巻南ICから県道12号線で約16km
JR東北新幹線新花巻駅から新鉛温泉行バスで約32分鉛温泉下車徒歩3分
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施設(日帰り用) |
休憩所、ロビー、売店、駐車場80台 |
宿 泊 |
旅館部:32室(内T付き5室) 料金は1万円〜2万円程度であるが、シーズン・曜日・1室人数・部屋等によって異なるので予約の際は下記HPを参照。
自炊部:80室、料金は2食付パックで4、515円(2008年2月現在)。 |
泉 質 |
アルカリ性単純温泉 (pH8.4 57℃ 250リットル/分) |
適応症 |
不記載(理由は「温泉の基礎知識ー温泉の効能」参照) |
外来入浴時間 |
7時〜21時(受付は20時まで) |
定休日 |
無休 |
入浴料金 |
大人 700円 子供 500円 |
入浴施設 |
内風呂:男2 女2 混浴1 男女交代制2
露天風呂:男1 女1 |
浴室備品 |
シャンプー・ボデイソープ・ロッカー・ドライヤー(白猿の湯には無い) |
観光スポット |
宮沢賢治記念館、宮沢賢治イーハートーブ館、宮沢賢治童話村、高村光太郎記念館 |
お土産・食事 |
土産は館内で可 昼食付き入浴有り(要予約)
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近くの温泉 |
新鉛温泉・大沢温泉・渡り温泉・松倉温泉・志戸平温泉・花巻温泉、台温泉 |
花巻市HP
観光協会HP
藤三旅館HP |
http://www.city.hanamaki.iwate.jp/index.html
http://www.kanko-hanamaki.ne.jp/
http://www.namari-onsen.co.jp/ |
雑記帳 |
作家・田宮虎彦は、藤三旅館に1ヶ月余り滞在し、鉛温泉を舞台とする「銀(しろがね)心中」を執筆した。彼の名前は勿論承知しているが、残念ながらこの作品は読んでいない。 |
風呂は他に男女別の「河鹿の湯」などがあるが、これらには入浴しなかった。
藤三旅館には旅館部と自炊部がある。
旅館部は32室(内T付き5室)有り、料金は1万円〜2万円程度であるが、シーズン・曜日・1室人数・部屋等によって異なるので予約の際は、下記HPを参照下さい。
自炊部は80室、料金は2食付パックで4,515円(2008年2月現在)。
藤三旅館は南花巻温泉郷の最奥、豊沢川の河畔に佇む一軒宿で、日本秘湯を守る会の旅館だ。ここには深さが1.25mもあり立って入浴する名物風呂・白猿の湯がある。加温・加水無しの温泉は、風呂の底から自然湧出する。