小野川温泉 尼湯 (山形県)

秘湯系が多い米沢八湯の中で、小野川温泉は唯一、米沢市郊外ののどかな田園地帯にある。八湯の中で規模が一番大きく、平安時代の歌人で絶世の美女・小野小町ゆかりの温泉だ。ここのシンボルの共同浴場「尼湯」に立ち寄った。

施設名 : 尼湯 (入浴日:2009年5月12日)

小野川温泉のシンボルである共同浴場「尼湯」を見つけるのに苦労はしない。
小野川温泉への交通標識に従って県道からそれて少し進むと、小さな温泉街の広場に入り、中央のY字路の分岐点に小さいながらも唐破風を持った尼湯がある。

もう一つの共同浴場である滝湯も尼湯の近くにあるが、こちらは地元の人が日常的に使うのだろうか、ごく目立たない簡素な湯小屋だ(こちらも200円で入浴できる)。

尼湯は無人なので、入浴するためには近くの2軒の商店「つるや商店」、または「山川屋商店」で200円を支払って入浴券をもらう。
その入浴券は捨てないで、脱衣棚の所定の場所に挟んでおくのがルールだ。

手前に脱衣所があり、仕切りなしのスルーで浴室に繋がっている。

浴室は白いタイル張り、風呂は5~6人が並んで入れる広さだ。
光線の具合か、含む硫黄ーナトリウム・カルシウムー塩化物温泉の泉質のためか、わずかに硫黄臭がして白濁しているように見える。

温泉と水がほぼ1:1位の割合で注がれているが、これは泉温が80℃と高温のためだ。
それでもかなり熱く、歯を食いしばってそろそろ浸かったが、その後は慣れてきて、いかにも小野小町ゆかりの温泉らしく、なめらかさときしきし感が混ざったような上質の湯を楽しんだ。

飲泉も可能でゆで卵臭があり、味は出汁の利いた塩味で、そのまま澄まし汁に使えそうだった。

所在地 : 米沢市小野川町 

米沢市は、山形県の南東部にある人口約92、000人の市で置賜(おいたま又はおきたま)地方の中心都市だ。
南部・東部は広い山地となっていて、特に南端の吾妻連峰一帯は磐梯朝日国立公園に指定され、天元台スキー場などがある豪雪地帯になっている。

米沢は戦国時代に伊達氏の本拠地となり、独眼で有名な伊達政宗もここで生まれている。その後、豊臣秀吉によって伊達政宗が陸奥岩出山に転封された後、蒲生氏、ついで上杉氏の支配下に入った。
上杉景勝は家老・直江兼続に30万石を与えて米沢に入れ、伊達氏及び山形の最上氏に対する抑えとした。

しかし上杉氏は関ヶ原の戦いに先立って徳川家康に敵対したため、1601年(慶長6年)に上杉景勝は91万石を30万石に減封され、居城を会津から米沢に移させられた。
兼続は米沢城を景勝に譲り、ここに上杉・米沢藩が成立した。
2009年のNHK大河ドラマ「天地人」の舞台であり、町中にこれと直江兼続の幟がはためき、伝国の社では天地人博が開催されており私たちも観光した。

小野小町の生誕地には数説があり、中でも秋田県湯沢市小野(旧裕勝郡雄勝町小野)が最有力、他に福井県越前市、そしてここ米沢市小野町などが挙げられる。
小野川温泉の一角には、小町観音が建立されている。


前日、吾妻火山群を挟んで反対側の福島県高湯温泉旅館ひげの湯に宿泊。
この日は先ず米沢八湯の一つ、姥湯温泉枡形屋に向かい、往路の冷汗をワイルドな露天風呂で流した。

途中の同じ八湯の一つ、滑川温泉をパスして浮いた時間を使ってNHK大河ドラマ「天地人」で活気付いている米沢市を観光、その後、この日に宿泊する白布温泉に向かう途中で小野川温泉に立ち寄った。


米沢市街から6、7km、白布温泉に向かう県道234号線からほんの少し外れた先に温泉街があり、共同浴場の尼湯と滝湯を囲むようにして小さな温泉宿と土産物屋が立ち並んでいた。
旅館組合のHPによると12軒の宿が営業している。

「日本でも有数の秘湯集中エリア」。
ある雑誌の秘湯特集号に掲載された「米沢八湯」の記事の巻頭語句である。


米沢八湯とは、山形県の南、福島県との県境となっている吾妻火山群を熱源とする「小野川」「白布(しらぶ)」「新高湯」「五色」「滑川(なめかわ)」「姥湯(うばゆ)」「大平(おおだいら)」「湯の沢」の8つの温泉の総称だ。
以前はこれに「栗子」「笠松」の2湯を加えて米沢十湯と呼ばれていたようだ。

位置的に「米沢市郊外」と表示されることが多いが、これを大都市郊外のベッドタウンのようなイメージを持つと大間違いになる。
「小野川」と「湯の沢」を除く6湯は山中に湧き、この内、白布を除く5湯が一軒宿、自家発電の宿が3湯もあるのだ。

また、大平・姥湯温泉などは、生半可でない温泉好き・秘湯好きの人でも、途中の道のりに冷汗をかきながら隘路・難路を進むことになる。


そんな米沢八湯の中で、小野川温泉は例外的にのどかな山里の田園風景の中にあり、平安前期の女流歌人で六歌仙・三十六歌仙の一人にして絶世の美女、小野小町(おののこまち)が湯治し治癒したという伝承があるなにやら床しい温泉場である。
「花の色は うつりにけりないたづらに わが身世にふる ながめせしまに」

火山口の下で入浴している雰囲気になる姥湯温泉枡形屋の露天風呂。

温泉名 : 小野川温泉 

こじんまりいるものの唐破風の立派な共同浴場だ。

入浴券を自分の棚の前に置いておき、出るときにこの箱に投入する。

脱衣場と浴室がスルー。タイルの白とケロリン桶の黄色と湯の青さが美しい。

5,6人が並んで入れる大きさ、かなり熱いが飛び出なかった。

データ (変更されている可能性もあります。お出かけ前にご確認ください。)
住 所 山形県米沢市小野川町2472-2
電 話 0238-32-2740(小野川温泉旅館組合)
交通機関 東北自動車道福島飯坂ICから国道13・121・234号線で約55km
JR山形新幹線米沢駅から山交バ小野川温泉行きで24分、小野川温泉下車徒歩1分
施設(日帰り用) 少し離れた裏側に駐車場あり 
宿 泊 不可
泉 質 含硫黄ーナトリウム・カルシウムー塩化物温泉(含硫化水素―塩化土類・弱食塩泉)
適応症 不記載(理由は「温泉の基礎知識ー温泉の効能」参照)
入浴時間 午前5時~午後10時だが、入浴券販売店の受付が午前7時~午後9時になっているので、外来者はこの時間帯で入浴する。
定休日 無休
入浴料金 大人200円  近くの「つるや商店」または「山川屋商店」で入浴券を購入する。
入浴施設 内湯男女各1
浴室備品 シャンプー・ボデイソープ類無し
観光スポット 白布大滝、上杉神社、上杉家廟所、上杉記念館、松が岬公園、稽照殿、春日山林泉寺、旧米沢高等工業学校本館(重文)など
お土産・食事 温泉街で食事・土産可
近くの温泉 新高湯温泉・白布温泉・大平温泉・湯の沢温泉・姥湯温泉・滑川温泉・五色温泉
米沢市HP
米沢観光協会HP
旅館組合HP
米沢八湯HP
http://www.city.yonezawa.yamagata.jp/
http://yonezawa.info/
http://www.onogawa.jp/~ryokan/
http://www.love-yone.com/hitou/
雑記帳 絶世の美女として名高い小野小町だが、彼女の絵や像は現存せず、後世に描かれた絵でも後姿が大半を占め、素顔が描かれていない事が多い。
そのため、本当に美女であったかどうかは謎のままだ。

上杉家の旗印の後方に、謙信公以下12代の藩主を祀る上杉家御廟所(国指定史跡)。旗印は謙信が毘沙門天を厚く信仰していたため毘の文字が用いられた。

小野川温泉街の中心にある尼湯(右側)。この位置からすると、昔は内湯を持たな旅館が、共同浴場である尼湯を中心に建設されたと想像できる。