小野川温泉 滝湯 (山形県)
小野川温泉は米沢市街から6、7km、白布温泉に向かう県道234号線からほんの少し外れた先にある。
宿泊した白布温泉では渓流だった鬼面川が川幅を増し、流れも緩やかになったあたりの右岸に温泉街が広がっている。
周囲は小高い山に囲まれた静かな表情を見せる保養向けの温泉地である。
館組合のHPによると12軒の宿が営業しているが、大型旅館は無く30室以下の中小規模で、それらが共同浴場の尼湯と滝湯を囲むようにして数軒の土産物屋とともに立ち並んでいる。
小野川温泉のシンボルである尼湯は、唐破風の玄関と切り妻屋根の情緒ある建物。
一方、もう一つの滝の湯は同じ広場に面しているが、こちらは素っ気ない建物で、専ら地元の人が通う文字通りの共同浴場だ。
秘湯系が多い米沢八湯の中で、小野川温泉は唯一、米沢市郊外ののどかな田園地帯にある。八湯の中で規模が一番大きく、平安時代の歌人で絶世の美女・小野小町ゆかりの温泉だ。ここのシンボルの共同浴場「尼湯」に続き、もう一つの共同浴場であり、地元の人が使う素朴な滝湯に立ち寄った。
浴室はこれぞ共同浴場の簡素さ、細かなタイルを敷き詰めた床、4mx2程度のシンプルな湯船が設けられている。
シャワー・カランの類は一切なく、僅かにおなじみの黄色いケロリン桶が置かれているだけだ。
温泉は、尼湯と同じ源泉で、硫黄ーナトリウム・カルシウムー塩化物温泉の泉質のためか、わずかに硫黄臭がしてほんの少し白濁しているように見える。
口に含むとゆで卵臭があり、味は出汁の利いた塩味で、そのまま澄まし汁に使えそうだった。
尼湯では高温(80度)のため源泉に加水していたが、ここも同様だろうか。
尼湯の後、間をおかずの入浴のせいか、かなりの高温だが飛び出ることなく浸かることが出来て、その後はいかにも小野小町ゆかりの温泉らしく、なめかさとキシキシ感が混ざった上質の湯を楽しんだ。
「日本でも有数の秘湯集中エリア」。
ある雑誌の秘湯特集号に掲載された「米沢八湯」の記事の巻頭語句である。
米沢八湯とは、山形県の南、福島県との県境となっている吾妻火山群を熱源とする「小野川」「白布(しらぶ)」「新高湯」「五色」「滑川(なめかわ)」「姥湯(うばゆ)」「大平(おおだいら)」「湯の沢」の8つの温泉の総称だ。
以前はこれに「栗子」「笠松」の2湯を加えて米沢十湯と呼ばれていたようだ。
位置的に「米沢市郊外」と表示されることが多いが、これを大都市郊外のベッドタウンのようなイメージを持つと大間違いになる。
「小野川」と「湯の沢」を除く6湯は山中に湧き、この内、白布を除く5湯が一軒宿、自家発電の宿が3湯もあるのだ。
また、大平・姥湯温泉などは、生半可でない温泉好き・秘湯好きの人でも、途中の道のりに冷汗をかきながら隘路・難路を進むことになる。
そんな米沢八湯の中で、小野川温泉は、平安前期の女流歌人で六歌仙・三十六歌仙の一人にして絶世の美女、小野小町(おののこまち)が湯治し治癒したという伝承があるなにやら床しい温泉場である。
「花の色は うつりにけりないたづらに わが身世にふる ながめせしまに」
小野川温泉のシンボルである共同浴場「尼湯」を見つけるのに苦労はしない。
小野川温泉への交通標識に従って県道からそれて少し進むと、小さな温泉街の広場に入り、中央のY字路の分岐点に小さいながらも唐破風を持った尼湯がある。
もう一つの共同浴場である滝湯も尼湯の近くにあるが、こちらは地元の人が日常的に使うのだろうか、ごく目立たない簡素な湯小屋だ
尼湯・滝の湯とも無人なので、入浴するためには近くの商店で200円を支払って入浴券をもらうが、滝の湯の方は、目の前の岩瀬商店か丸太屋で求めることが出来る。。
その入浴券は捨てないで、脱衣棚の所定の場所に挟んでおくのが2つの共同浴場のルールだ。
米沢市は、山形県の南東部にある人口約92、000人の市で置賜(おいたま又はおきたま)地方の中心都市だ。
南部・東部は広い山地となっていて、特に南端の吾妻連峰一帯は磐梯朝日国立公園に指定され、天元台スキー場などがある豪雪地帯になっている。
米沢は戦国時代に伊達氏の本拠地となり、独眼で有名な伊達政宗もここで生まれている。その後、豊臣秀吉によって伊達政宗が陸奥岩出山に転封された後、蒲生氏、ついで上杉氏の支配下に入った。
上杉景勝は家老・直江兼続に30万石を与えて米沢に入れ、伊達氏及び山形の最上氏に対する抑えとした。
しかし上杉氏は関ヶ原の戦いに先立って徳川家康に敵対したため、1601年(慶長6年)に上杉景勝は91万石を30万石に減封され、居城を会津から米沢に移させられた。
兼続は米沢城を景勝に譲り、ここに上杉・米沢藩が成立した。
謙信公以下12代の藩主を祀る上杉家御廟所(国指定史跡)。折からのNHK大河ドラマ「天地人」の影響で、米沢市の観光スポットはどこも賑わっていた。
硫黄分のせいだろう、僅かに白濁。湯の華が大量に浮かんでいた。尼湯では湯の華に気がつかなかったので、こちらは加水無し、湯の華を除去していないせいかもしれない。
建物横にあった源泉槽、温度を下げるためだろうか。
住 所 | 山形県米沢市小野川町(番地不明) |
電 話 | 0238-32-2740(小野川温泉旅館組合) |
交通機関 | 東北自動車道福島飯坂ICから国道13・121・234号線で約55km JR山形新幹線米沢駅から山交バ小野川温泉行きで24分、小野川温泉下車徒歩1分 |
施設(日帰り用) | 少し離れた裏側に駐車場あり |
宿 泊 | 不可 |
泉 質 | 含硫黄ーナトリウム・カルシウムー塩化物温泉(含硫化水素―塩化土類・弱食塩泉) |
適応症 | 不記載(理由は「温泉の基礎知識ー温泉の効能」参照) |
入浴時間 | 午前7時~午後8時 |
定休日 | 無休 |
入浴料金 | 大人200円 近くの岩瀬商店か丸太屋で支払う。 |
入浴施設 | 内湯男女各1 |
浴室備品 | シャンプー・ボデイソープ類無し |
観光スポット | 白布大滝、上杉神社、上杉家廟所、上杉記念館、松が岬公園、稽照殿、春日山林泉寺、旧米沢高等工業学校本館(重文)など |
お土産・食事 | 温泉街で食事・土産可 |
近くの温泉 | 新高湯温泉・白布温泉・大平温泉・湯の沢温泉・姥湯温泉・滑川温泉・五色温泉 |
米沢市HP 米沢観光協会HP 旅館組合HP 米沢八湯HP |
http://www.city.yonezawa.yamagata.jp/ http://yonezawa.info/ http://www.onogawa.jp/~ryokan/ http://www.love-yone.com/hitou/ |
雑記帳 | 絶世の美女として名高い小野小町だが、彼女の絵や像は現存せず、後世に描かれた絵でも後姿が大半を占め、素顔が描かれていない事が多い。 そのため、本当に美女であったかどうかは謎のままだ。 |
温泉節約のために湯量を抑える時間もある旨の文言があった。
入浴は7時~20時まで。
滝湯では脱衣棚の横に入浴券を挟みこむ。
広場の端にひっそり佇む素朴な滝の湯
これ以上ないシンプルな浴室。シャワーは勿論カランもない。黄色のケロリン桶が似合う浴室だ。
火口の下で入浴している雰囲気になる姥湯温泉枡形屋の露天風呂。