入之波温泉 山鳩湯 (奈良県)

改訂版

所在地 : 吉野郡川上村入之波
住  所 奈良県吉野郡川上村入之波
電  話 0746ー54ー0262
交通機関 西名阪・郡山ICから国道24・169号65km
近鉄線 八木駅・大和上市駅から湯盛温泉杉の湯下車乗りかえ入之波温泉行きバス終点下車
施  設 食事処、休憩室  駐車場(12台)
宿  泊 7室  11,800円~(何れもBTなし)
(部屋数は4室というデータも有る)
外来入浴時間 10:00~17時(受付終了は16時) 
外来定休日 11月~3月末まで 火曜日・水曜日
4月~10月末まで 水曜日

泉 質 ナトリウムー炭酸水素塩・塩化物温泉(含炭酸重曹泉)  39℃(加温なしの源泉掛け流し、無色透明、甘味で硫化水素臭を有し、数時間後、淡黄褐色になる。
適応症 不記載(理由は「温泉の基礎知識ー温泉の効能」参照)
入浴料金 大人800円 小学生以下400円 
入浴施設 内湯:男1女1、露天風呂男1女1
浴室備品 シャンプー、ボディソープ、ロッカー
観光スポット 丹生川上神社上社 、道の駅 杉の湯川上、森と水の源流館、大台ケ原、大迫・大滝ダム、蜻蛉の滝不動窟
お土産・食事 館内で昼食喫茶可
土産は「道の駅杉の湯川上」で。(詳しくは川上村HP参照)
近くの温泉 湯盛温泉杉の湯
山鳩湯HP
川上村HP

なら旅ネットHP
http://www.yamabatoyu.yoshino.jp/
http://www.vill.kawakami.nara.jp/
http://yamatoji.nara-kankou.or.jp/08onsen/01onsen/04south_area/yamabatoyu/
データ (変更されている可能性もあります。お出かけ前に当該施設のHPなどでご確認ください。)

吉野川は2ヶ所のダムにより、清流渓流とは呼べない緑色のダム湖状になっている。

源泉温度が39℃なので冬期を覗いて加温してなかったが、現在はどうだろうか。含有するカルシウムが付着してこんな蛇腹模様が作られる(以前撮影)。定期的に削り取らないと、肌が傷つきやすくなる。浴室の床に簀の子の置かれてるのは、足裏を傷つけないためではないか。

風 呂

関西には珍しい(掘削)自噴温泉で茶色の濁り湯、かって温泉教授の松田忠則氏が知床よりアクセスが悪いと著書に既述した入之波(しおのは)温泉は、奈良県と言うよりも関西を代表する秘湯だ。これまで10回近く入浴した山鳩湯だが、今回は同じ川上村にあり、公共の宿としては、全国初の政府登録国際旅館に指定された新湯盛温泉杉の湯を予約、ここにチェックイン前、10数年ぶりに山鳩湯を訪れた。歳月は過ぎていたが、湯船も温泉そのものも昔のまま、まるで時の流れが止ってた気持ちになって、しばし加温無し、しっとり温めの濁り湯に身を沈めていた。

炭酸を含み泡だったナトリウムー炭酸水素塩・塩化物温泉がドドッと豪快に落とされる。関西には珍しい風景で、これを見るだけでここに来た甲斐がある。

山鳩湯は、国道169号線からそれてダム湖沿いに1.5車線道路を3km程進んだ崖下にあり、日帰り入浴が中心だが、低料金で宿泊も出来る。

駐車場は3台分ほどあるが満員のときが多く、そのときは向って右側の道路のダート駐車場に、さらにそこも塞がっているときには、道路沿いに適宜停める。
付近の谷を150mまでボーリングしたところ、炭酸を多く含む重曹泉が自噴したという山鳩湯は、「温泉教授」の松田忠徳氏が著書の中で激賞、その後新聞・テレビ・ガイドブック等で度々報道され、日本中に知られる温泉宿となった。

道路からは建物が見えず、マッチ箱を積み上げたような建物がダム湖への僅かな斜面に建てられ、いまにも湖に滑り落ちそうに見える。

関西で珍しい自噴温泉は、先ず内湯浴槽にドバドバと落とされ、その後露天風呂に流れ込み、最後はダム湖に流れ落ちていく。

内湯や露天風呂は大量に含まれるカルシウム等の物質が浴槽に付着し、まるでごつごつした溶岩風呂に入っている気持ちがする。無意識に浴槽に背中を付けると傷つけることになるので要注意。
季節によって加温するらしいが、加水していないぬるめの湯には長時間入浴できるが、これが災いして湯当りする人もいるようだ。

川上村は東西を台高山脈と大峯山脈そして北を吉野の山々に囲まれ、最低海抜240mから最高海抜1378mまでの高低差がある。
多雨地帯から流れ出る数々の源流はここで合流して吉野川となり、しばし北行、後に西行し、和歌山県に入ると名前を紀の川と変え、和歌山市で紀伊水道に注ぐ。

吉野川には、大迫ダム、大滝ダムが建設され、ダム間は川幅が広がり、流れがほとんど無く濃緑色のダム湖になっている。

川上村はその名に相応しく吉野川・紀の川の生みの親である。村にはいたるところに、源流となる大小さまざまな形の滝が見られる。

吉野林業発祥の地でもある川上村では、500年前から杉の植林が進められてき来た。
村のほとんどが山林で、国道168号線沿いから仰ぎ見ると、よくあんな高いところまで植林したなと感嘆する。
美しい光景だが、花粉症の原因となり、秋の紅葉が見れないといったマイナス面もある。

天竜杉、尾鷲檜と並んで日本三大人工林の吉野杉だが(異説有り)、林業は輸入材に圧迫されて全国的に低迷を続けている。

林業の中心だった川上村も同様で、このことは、村の人口が1965年には7,165人いたのが2020年(8月)にはわずか1、325年人となり1/5以下に減少していることからも分かる。

檜の丸太で造られた露天風呂からは緑色の吉野川(大迫貯水池)を見下ろし、その向こうに千メートル級の山々が連なる。

階段途中にある休憩所、ごろ寝が出来る。

浴槽から流れ出た温泉は、そのまま湖へ。地肌が温泉成分で黄土色になっている。

入口から階段を下りた先が玄関、大きな木製の下駄箱が鎮座している。一歩足を踏み入れると「これぞ秘湯の雰囲気」を味わえる。入浴料金は大人800円。入浴時間は午前10時~午後4時。定休日は火曜日(冬期は火曜・水曜)。食事処は、以前畳敷きだったがテーブル席になっていた。風呂に行くには、湖面に向って2つの階段を下らねばならない。年寄りには帰りの階段が恐い。

宿は道からは見えず、ダム湖に落ち込む斜面にへばりつくように建てられている。背後には剥き出しの崖も聳え、地震や大雨のときどうなるか心配する人もいるだろう。日帰りがメインだが、数室の客室があり、10000円少々で宿泊出来る。

施設名 : 山鳩湯 (最終入浴日:2020年7月「20日)

露天風呂の浴槽から溢れ出た温泉が湖面に向って流れ下っていく(以前「撮影)。

10人が一度に入れる大きな内湯。関西では貴重な(掘削)自噴かつ黄土色の濁り湯で、20年前に初めて入浴したとき、関西でこんなすごい温泉に浸かれるんだと感激したものだ。泉質はナトリウムー炭酸水素塩:塩化物温泉。湧出時は透明だが、経時変化で鉄分が酸化して黄土色になる。

内湯から露天風呂へ湯が落ちる。その湯口もカルシウムが付着してこの状態。

最近付着成分を削り撮ったのだろう、浴槽を作っている地元の杉の丸太が現れてた。10回ほど入浴したが、これを見るのは初めてだ。

奈良県北部から和歌山県南端にかけて、紀伊半島を南北に縦断する山岳国道が2本通る。

番号が隣り合わせの国道168号線と169号線だ。
何れも急峻な山の斜面をえぐって完成した山岳道路で、近年、あらたなトンネル建設や2車線化が進んで入るものの、豪雨で修復まで数年が見込まれる大規模な土砂崩れが起こるなど、いぜんとして日本有数の秘境を通過する難路である。

この両国道沿いには多数の温泉が点在している。
特に国道168号線は、2004年4月に全施設源泉掛け流しを宣言した十津川温泉郷から和歌山県に入って湯の峰温泉川湯温泉渡瀬温泉などの有名温泉を通過する。
国道169号線は、ここ入之波温泉から上北山下北山村の日帰り温泉、さらには三重県の秘湯・湯ノ口温泉へと通じている。

入之波を「しおのは」と読める方は相当の温泉通と言っていい。
元禄時代には既に「御夢想塩湯」という名で知られており、谷崎潤一郎の「吉野葛」にも登場するようだ。
昔の源泉はもっと低い所にあったが、大迫ダムの完成によって湖底に沈んだ。

以前は雰囲気が正反対の湯旅館、山鳩湯と村営の五色湯があったが、後者は営業不振により閉館された。

山鳩湯は、マスコミや各種温泉ガイドブックに関西圏を代表する秘湯・名湯として度々紹介され、全国的にその名が知られてきている。
温泉教授・松田忠徳氏がその著書で、入之波温泉を知床を上回る秘境の地と評しておられる。
奈良県には紀伊半島の深部、日本三大秘境の十津川村にある十津川温泉があるが、川上村もアクセスの不便さでは負けていない。

この近辺の吉野川は大迫(ダム)貯水池と呼ばれ、周辺は1000m級の吉野の山々で囲まれている。

国道169号から左折、大滝ダムの堰堤を渡って、ダム湖沿い、ガードレールが途切れがちな隘路(すれ違い可能)を3kmほど走った先に山鳩湯がある。

温泉名 : 入之波(しおのは)温泉