施設名 : 奴留湯温泉共同浴場 (入浴日:2007.4.9)
データは変更されている可能性もあります。お出かけ前にご確認ください。
小国町は熊本県の最北端、阿蘇外輪山の裾野にあり、筑紫次郎と呼ばれる筑後川の上流に位置している。
東西北部を大分県、南部を南小国町と隣接し、総面積の74%を山林が占める農山村地域だ。
大分県との県境には、九重山系の秀峰で標高標高1,500mの湧蓋山(わいたさん)が聳えている。
その形から小国富士ともよばれ、西側の山裾には、いたる所で湯煙が舞い上がる。
「はげの湯」「岳の湯」「山川」などの温泉群がそれである。
一方、湧蓋山の西側、筑紫川の源流・杖立川の河畔には、かって九州の奥座敷と呼ばれた古湯・杖立温泉が湯煙を上げている。
小国町内、前方に湧蓋山(わいたさん)が見える。
岳の湯温泉豊礼の湯で入浴した後、山を下っておよそ5km足らず、世間にはあまり知られていない奴留湯温泉に向かった。
同じ小国町にある杖立温泉
大分自動車道玖珠ICから国道387号線に乗って湧蓋山を巻くように南下して県境を越え、熊本県小国町に至るまでの沿道に次から次と温泉が現れてくる。
壁湯・生竜・宝泉寺・川底・岳の湯・はげの湯・山川など、これに加えて日帰り温泉施設の看板を頻繁に見かける。
そして、最後に現れるのが日本が生んだ世界的細菌学者・北里繁三郎の生家手前、国道からほんの少し旧道に入った集落にひっそり佇む奴留湯温泉である。
奴留湯温泉には古くから地元の人の手で維持管理されてきた共同浴場が一軒あるのみで旅館は無い。
奴留湯という温泉名に接したとき、まず「温い」の当て字にしては珍しい文字を使っているなと思った。
次に他のたくさんのサイトに「参勤交代に付き従った奴(やっこ)がここに入浴して疲れた体を癒した」ことに由来するという記事を見かけた。
しかし、「奴」は「中間(ちゅうげん)」や「折助(おりすけ)」と呼ばれ、武家社会の中で最下級の身分の蔑称であり、参勤交代などの際に臨時雇用されることが多かった。
こんな身分の者が、殿様のお供の際にゆったりと湯に浸かれることが許されるはずもないので、この由来には?がつくが、それはご愛嬌で目くじらを立てるまでもない。
ひっそりした旧道集落の左手に奴留湯温泉の共同浴場が佇む。
プースケさんの紹介が無ければ100%入浴できず幻の温泉で終わるはずだった。
もう一度、御礼申し上げます
m(_ _)m。
プースケさん、この温泉を紹介くださったことに厚く御礼申し上げます。至福の一時を過ごさせていただきました。
裏側にあって5台程度収容する駐車場(らしき所)に車を停めて道路側に向かう。
浴舎はコンクリートの打ちっぱなしに黒瓦を乗せたシンプルでがっしした造りだ。
管理人は常駐していないようで、階段を下った先の入口に置かれている料金箱に200円を入れて館内に入る
入浴時間は9時〜21時で年中無休だ。
7,8人が一度に入れる浴槽。地元と他県から来られた入浴客と話が弾む。お2人のご了解を得て撮影・掲載。
高い吹き抜けの天井の下に、床も浴槽も石板で敷かれた端正な造りで、大小2つの湯舟がある。
小さい方は掛け湯・上がり湯専用の様だ。
先客2人に挨拶をして浴槽に浸かる。
浴槽の底には人間の顔程度の石が無造作に置かれていて、何れか安定の良い石を見つけて腰を落す。、
先ず感じたのは、私が最も好む湯温だったことだ。源泉温度は38℃らしいが、湯舟の温度は間違いなくこれを下回り35〜36℃程度だろう(季節・時間によって異なるようだ)。
この温度だったら1時間でも2時間でも浸かっていられる。
他の方のサイトでは、「あっという間に2時間が過ぎていた」の記述があり、最もだと思う。
先ほどの温泉名「奴留湯」の「奴」については疑問を投げかけたが、「留」は的を得た当て字だと感じ入った。
風呂に何時間も留まっていられるからだ。
次に感じたのは、体を包み込むようなしっとりした湯の感触だった。
泉質は単純硫黄泉、浴室内には硫化水素の臭いが漂っているようだが、鼻の利きが悪い私には分からない。
しかし、細かな湯の華が漂い、しばらくすると肌に小さな気泡が付着するやわらかなヌメリ感は、滅多に出会わない極上の湯だった。
温泉は透明だが、わずかに青味がかっているように思える。
硫黄泉だから白濁してもよさそうだが、常に新鮮な湯が注がれ掛け流しになっているので、経時変化が起きないのだろうか。
温泉は外気温が低い10月から5月の夕刻から加温されるようだが、私が入浴したのは4月9日の午後3時、恐らく加温無しの温泉だったと思う。
前方の浴槽は掛け湯・上がり湯に使う。浴槽の縁から湯が静かに流れ出て床を濡らし奥の溝に流れ込む。
先客2人と温泉や地元の話題であっという間に30分が過ぎた。
もっと浸かっていたかったが、例によって立ち寄り湯をしない家内を車に待たせているので、それは叶わない。
名残惜しく風呂から上がったが、まさに極楽浄土、至福の一時だった。
3回目の九州遠征があれば、もう一度必ず立ち寄ると心に決め、今夜の宿泊地、杖立温泉・米屋別荘に向かった。