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天栄村は福島県の南部、那須高原の北部にあり、なぜ平成の市町村合併の対象とならないのか、不思議に思えるくらいの小さな村だ。

東西に長く、東は東北自動車道矢吹ICから近くて農耕地が開け、西へは那須連山の北麓を巻く国道118号線を走れば会津・今市を結ぶ国道121号線(会津西街道)に出る。

那須連山山間部分の地勢は急峻で、90%が山林原野となっていて、冬季は2mに達する積雪がある日本海気候の地域である。

村名は、村の中央部にある天栄山に由来する。
観光資源としては、昔ながらの素朴な風情を保つ(岩瀬)湯本温泉と人気の大丸あすなろ荘がある二岐温泉を有する。
国道118号線から分離して二岐温泉に向かう県道は、堂々たる2車線の快適な道だった。
二岐温泉を初めて知ったのは、温泉巡りを始めて間もなく、温泉教授・松田忠徳さんの著書「日本百名湯」でだった。
そこには、大丸あすなろ荘が、「極上の源泉を堪能する秘湯中の秘湯」と紹介されていた。

この日、前日宿泊した山形県の白布温泉を発って、途中、会津若松城を観光後、国道118号線を南下し芦ノ牧温泉に立ち寄った。
その後、これまた2度目の大内宿を観光してから国道を更に南下、奇勝・塔のへつり」を観光してから近くの湯野上温泉で入浴、今来た道を引き返し3時過ぎに二岐温泉に向った。
国道118号線を右折、岩瀬湯本温泉の手前で右折して県道に入る。
標高800mの二岐山を巻くようにして高度を上げるが、地図上ではか細い1.5車線を想像させる道は国道より立派な両側で2車線、あっという間に宿に到着した。

二岐温泉の開湯は平安時代、1200年前に遡り、その後、会津街道と白川藩をつなぐ裏街道にあった二岐は、大名だけが入浴できる温泉だったようだ。
二岐温泉とこの宿が知られるようになったのは、温泉教授こと松田忠徳氏が日経新聞に連載していた日本百名湯の中で紹介されたことが大きい。

駐車場に車を停め、棟門をくぐり敷石を進むと、生垣や手水鉢がたくみに配置された数奇屋造りの玄関に達し、日本秘湯を守る会の提灯が下げられていた。

この宿の主・佐藤好億さんは、朝日旅行会の故岩本一二三氏がわずか13軒で立ち上げた日本秘湯を守る会の創業期のメンバーで、現在、同会の会長をつとめている。

当時は現在のような秘湯ブームはなく、周囲に何もない状況で、経営にもかなり苦労をされたと聞く。
今でこそ、これが秘湯の宿かと思うくらい、小粋な洗練された雰囲気を館外・館内に漂わせているが、平成5年までは、茅葺屋根の山小屋風の建物だったようだ。
天栄村観光協会のHPによれば、現在の宿は3軒のみである。
写真は大丸あすなろ荘の駐車場から玄関に向かうアプローチ

二岐温泉 大丸あすなろ荘 (福島県)
所在地 : 岩瀬郡天栄(てんえい)村
温泉名 : 二岐(ふたまた)温泉 
施設名 : 大丸(だいまる)あすなろ荘 (入浴日:2006.10.2  宿泊日:2009.5.13)
 
温泉教授松田忠徳氏の「日本百名湯」の温泉宿であり、「日本秘湯を守る会」発足時の会員わずか13軒の一つで、現在、同会の会長をしている二岐温泉大丸あすなろ荘。2年半ぶりの再訪は、宿泊することにした。
日本秘湯を守る会 会長の宿
温泉ガイドブックなどでは、ここを秘湯の宿というよりも、洗練された高級感のある隠れ宿といったイメージを抱かせる記事を多く見かける。
現に周囲は自然だけの山深い二岐川沿いに立ち、24室だけの小規模の宿だが、料金は6畳の小さな1室を除いて、2人1室で19,050円〜28,500円とかなりの高額設定だ(2009年11月現在 全室BT付 詳細は宿HP参照)。この料金だと、私の基準からするば高級旅館と分類される。
温もりを感じさせるラウンジ
今回の宿泊に際しては、日本秘湯を守る会にあった割安の企画(15,900円)を申し込んだためか、階段を上り下りする部屋(8畳+3畳位の次の間+BT)だった。食事も山菜や川魚を中心にした素朴な料理であり、高級旅館に宿泊したという実感は湧いてこなかった。

渓流沿いの森の中に佇む
風 呂
風呂は次の通りですべて源泉掛け流しである。

・露天風呂が付いた男女別の大浴場。
・足下から温泉が湧出する混浴の岩風呂(女性専用タイム有り)。
・渓流に面した混浴露天風呂(女性専用タイム有り)と内風呂がついた女性用露天風呂(男性専用タイム有り)。

源泉は自然湧出する源泉6ヶ所を有し、内4本は単純温泉で、2本はカルシウム−硫酸塩泉、合計湧出量は250リットル余りだ。
岩風呂 (自噴泉甌穴風呂 混浴・女性専用タイム有り)
大丸あすなろ荘に到着したら、何はさて置いても入浴したいのが通称「岩風呂(自噴泉甌穴風呂)」だ。
天然の河床をそのまま生かした自噴泉岩風呂は、享保13年(1728年)に造られたもの。
その名の通り、湯船の底の岩の割れ目から温泉(カルシウムー硫酸塩温泉)が自噴する貴重な風呂で、温泉マニアなら一度は入ってみたいものだ。
湯船の底には、小石が水流で転がって削り取った円形の穴(ポットホール)が3個有り、昔は川だったことを物語っている。
昔は河床だったゴツゴツした底の湯船。慣れるまで大きなポットホールに吸い込まれそうで1人で入浴するのが怖い。一般の宿泊客はこちらをあまり利用しないため、無人のことが多い。むしろ、風呂・温泉そのものが目当ての日帰りタイムの方が混んでいるかもしれない。
明り取りがあるだけの木造の湯小屋。宿泊の場合、朝の6時から8時まで女性専用タイムとなる。
山菜天ぷら
川魚
牛肉蒸篭蒸し
山菜
前菜
夕食・朝食とも掘り炬燵敷きの足を伸ばせる食事処で取った。夕食は秘湯系の宿で多く見かける山菜や川魚の皿が多く出され胃にもたれない軽い料理が中心で有り難かった。しかし、華やかさは無く、宿泊料金に応える洗練された料理を期待する方は失望されるかもしれない(但し、割安プランで宿泊しているので通常料金だと料理が違うかもしれない)。逆に朝食は品数が多く充実していたが、我々には多すぎた。。
● 夕食の一部
● 朝食
茶碗蒸し
きのこ鍋
料 理
住 所 福島県岩瀬郡天栄村大字湯本字下二俣5
電 話 0248−84−2311
交通機関 東北自動車道白河ICから県道白河羽鳥線を羽鳥湖方面へ。国道118号線経て約60分
JR東北新幹線新白河駅からヤーコンバスで1時間40分、終点下車徒歩5分(1日1往復要予約))
日帰り利用施設 昼食処(11時〜13時)、ロビー売店、駐車場(40台)
宿 泊 2人1室 14,850円(6畳)〜28,500円(2009年11月現在)
チェックイン15時 アウト10時
料金は各種条件や年度で改定されるので、予約の際は必ず下記の宿HPを参照ください。
泉 質 源泉6本 単純温泉及びカルシウムー硫酸塩温泉
適応症 不記載(理由は「温泉の基礎知識ー温泉の効能」参照)
外来入浴時間 11時〜14時30分(確認不要)
定休日 無休
入浴料金 735円
入浴施設 内風呂:男1、女1、混浴1(女性専用タイム有り)
露天風呂:男女別各1、男女交代2
宿泊者は24時間入浴可
浴室備品(日帰り) シャンプー、ボディーソープ、ロッカー、ドライヤー
観光スポット スキー、キャンプ、トレッキング ・登山(二岐山から甲子温泉のルートが人気)
大内宿、会津若松市、喜多方市、猪苗代湖周辺、(裏)磐梯山、五色沼
お土産・食事 昼食・土産館内で可
近くの温泉 岩瀬湯本温泉、湯野上温泉、芦ノ牧温泉、東山温泉、甲子温泉、新甲子温泉
天栄村HP
観光協会HP

大丸あすなろ荘HP
http://www.vill.tenei.fukushima.jp/
http://www.ten-ei.net/
http://www.daimaruasunarosou.com/
雑記帳 平成20年9月、南会津と福島県県南地域を結ぶ甲子道路(国道289号線)が開通し、これにより周遊ルートが完成した。
温泉に関しては、日本100名湯の2つの宿「二岐温泉大丸あすなろ荘」と「甲子温泉旅館大黒屋」を短時間で巡ることが出来るようになり、このほか岩瀬湯本温泉・湯野上温泉・新甲子温泉等の周遊が可能になった。
内湯・露天風呂ともシンプルな構造。温泉は単純温泉の混合泉で、湯に特徴はない。体・髪をここで洗った後はここに戻ることはなかった。
あすなろ湯 (男女別内湯+露天風呂)
内湯もあり、両方の風呂に岩風呂と異なるカルシウムー硫酸塩温泉が単一で注がれる。午後6時から9時までは男性が入浴出来る。
渓流露天風呂より川がほんの少し遠ざかるが、それでも風呂の一番先端に体を沈めれば、ブナの林と渓流と一体となった贅沢な入浴を満喫できる。
子宝湯 (内湯と露天風呂から成る。基本は女性専用だが男性タイム有り)
奥の円形の風呂は渓流と一体となっている。
河床が剥き出しの円形の風呂。温泉は単純温泉の混合泉だが露天風呂の中ではここが一番雰囲気がある。
かなり温めで注がれる温泉の量は抑え目だった。
風呂と目の前を流れる二岐川の清流が一体となった渓流露天風呂だ。

少し離れて2つの風呂があるが、奥の方に位置する河床がむき出しになった円形の風呂が、渓流に最も近いこともあって露天風呂の中で最も気に入った。

手前の6、7人が入れる露天風呂は温度が低く35℃程度、それに比べて奥の方が若干高かった。
この2つの浴槽には、複数の単純温泉の混合泉が注入されていて、特色ある皮膚への感触はない。

基本は混浴だが、午後6時〜9時までは女性専用タイムになっている。
しかし夕食時間にかかっており、女性がこの専用タイムを利用する場合は少し慌しい入浴となる。
渓流露天風呂 (混浴だが女性専用タイム有り)
温泉が底の岩盤から湧き出ている証拠写真