アーチ型のシャワースペース
大小2つある蒸し風呂
反対側から見た浴室
もともと味音痴、料理にはうるさくない私なので、これだけ食事に紙面を割いたのは初めてだ。
これも、京都で腕を磨いた総料理長の和食への情熱・こだわり・技が一品一品毎に籠められているのが、鈍感な私にも通じたためだろう。
向附
寄せ盛
そして最後に「料理人/峰田善巳」の名がある。
控え目に「料理人」とあるが、積善館のご主人と女将がその技術に惚れ込んで引き抜いた方で、ここで10年も腕を振るっている総料理長だ。
京都で修行されたそうで、「全国日本調理技能士会連合会師範」「社団法人日本料理研究会理事」「関西調理師創庖知新会副理事長」等の肩書きを持つ。

山間の四万温泉は、普通なら「地元の山菜・川魚」を売り物にするロケーションだが、総料理長は、旬と日本中の食材を使い、和食の形にこだわる。
その一例が「寄せ盛」と「向附」の食材と盛り付けだ。
・寄せ盛:穴子寿し・ひょうたん蕪・しめじ酒焼・黒豆蜜煮・数の子床漬・才巻海老・芋洋かん・木の葉雲丹
・向附:鯛松皮造り・牡丹海老・青利烏賊・蒸し鮑・ばくだい・巣立・千社唐・山葵・花穂
11月 埋火のもてなし
夕食は部屋食だが、先ず驚いたのは係りの仲居さんからフルネームの名刺を頂いたこと。(みつ子さんは素晴らしい方でした)
はっきり覚えてはいないが、多分、初めての経験だ。
宿泊客の満足度を高めるため、仲居さんの自覚・プライド・責任を持たせる・・・そんな目的が推察されるが、歴史ある宿で斬新なことを実行しているチャレンジ精神に感心した。

最初にテーブルに置かれた料理の後は、一品ないし二品毎に出される。
旬の食材はもちろん、日本中の様々な山海の食材を使い、どれも手を抜かず、一手間かけた品のいい料理が供される。

テーブルに置かれたお品書きがA4という大きさも珍しいが、
そこにびっしりと料理名と食材が記述されている。
料 理
現在の四万温泉は、旅館・ホテルが40軒ほどあり、昔ながらの落ち着いた和風建築や近代的なホテルが建ち並ぶが、歓楽街的なところは全く無く、保養温泉地として静かな佇まいを見せている。
これを象徴する面白い文句が温泉協会のホームページに掲載されている。
[四万温泉にないもの]
信号機  一方通行  交通渋滞  有料駐車場  24時間営業の店 コンビニ  ファミレス  歩道橋  梅宮辰夫のお店  PHS
ぼったくりのお店  風俗店  怖いお兄さん  18歳未満禁止の看板 呼び込み  田んぼ  悪臭  ネオン  ゴミ  レンタルショップ(一部略)

四万温泉には、全部で43ヶ所の源泉がある。
湧出形態は、3ヶ所が堀削源泉で、堀削深度は100m〜300mと浅い。その他の40ヶ所は、すべて自然湧出となっており、温泉力の強さを証明している。
全体の湧出量は、毎分約3,500リットル、平均pHは7.7、泉質はカルシウム・ナトリウムー塩化物・硫酸塩泉が多い。

2回目宿泊 
山荘・萌黄の1
はこちら

データ (変更されている可能性もあります。お出かけ前にご確認ください。)

佳松亭貴賓室(望月の2)

所在地 : 吾妻郡中之条町  
温泉名 : 四万(しま)温泉 
施設名 : 積善館 (宿泊日:2006.11.5)
上州(群馬県)三名湯とは、草津・伊香保・四万温泉のことだ。
昔から様々な病(四万の病気)に効くと言われてきた名湯だが、今回、創業300年を超える老舗旅館・積善館に宿泊した。
住  所 群馬県吾妻郡中之条町四万温泉
電  話 0279−64−2101
交通機関 関越自動車道渋川伊香保ICから国道353号線で約37km
JR吾妻線中之条駅から四万温泉行バスで40分
施  設 食事処、無料休憩所、駐車場(50台)
宿  泊 本館(26室):2人1室で6000円前後
山荘(12室) 佳松亭(16室)
 15,000円〜25,000円前後
(料金は2010年8月現在のホームページから)
料金は変更されるので、予約前に下記積善館HPで参照下さい。
入浴時間 立ち寄り湯:午前10時〜午後5時
宿泊者は24時間
定休日 年中無休
泉 質 ナトリウム・カルシウムー塩化物・硫酸塩温泉
適応症 不記載(理由は「温泉の基礎知識ー温泉の効能」参照)
入浴料金 大人 1,000円(大広間・積善やでの休憩込み)
入浴施設 内風呂:男女各2 混浴1、露天風呂:男女各1、貸切風呂・2(無料)
日帰り入浴は元禄の湯と岩風呂のみ入浴可。
浴室備品 元禄の湯にはカラン、シャンプー、ボディーソープ等無し
観光スポット 四万温泉周辺:摩耶の滝・小泉の滝・奥四万ダム・日向見薬師堂(国指定重要文化財)・甌穴
お土産・食事 立ち寄り湯の昼食可(温泉釜揚げうどん1300円、山菜そば800円、月見うどん・そば800円)
近くの温泉 沢渡温泉、川中温泉、川原湯温泉湯の平温泉
中之条町HP
温泉協会HP
積善館HP
http://www.town.nakanojo.gunma.jp/
http://www.shimaonsen.com/
http://www.sekizenkan.co.jp/
中之条(なかのじょう)町は群馬県の北西部に位置し、北は新潟県に接する県境の町だ。
森林が面積の約8割を占めているが、盆地、河岸段丘、丘陵地などがみられ、地勢は変化に富んでいる。

南部は比較的平坦で市街地が形成されているが、北部は三国山系の山々がそびえており、上信越高原国立公園に指定されている。

交通は、JR吾妻線や国道145号及び353号、主要地方道などが走っており、首都圏まで150kmの距離にある。
鉄道では特急で2時間強、道路では関越自動車道を利用して約3時間の位置にある。

産業は、米・こんにゃく・野菜・果樹などの農業が中心だが、林業も行われている。
温泉地としては上州三名湯の四万温泉の他に、沢渡(さわたり)・たんげ温泉などが町域にある。

2010年8月改訂

永延3年(989)、源頼光四天王の1人として勇名を轟かせていた、日向守碓氷貞光が越後から上野国に向う途中、夜もすがら読経をしていた。
そのとき、童子が現れて、「汝が読経の誠心に感じて四万の病悩を治する霊泉を授ける。」と夢うつつにこの神託を聞いた。
覚めた後、湧出する温泉を見つけた貞光は、温泉を御夢想の湯と呼び、この地を神託にちなみ四万の郷と名付けた。
これが四万温泉の由来だそうだ。

四万温泉は、草津・伊香保とともに上州(上毛)三名湯に数えられる。
他の2つの温泉より知名度は低いが、その分、しっとりとした雰囲気があり、昔から「胃腸病の温泉」として評判が高い。

群馬・新潟両県の境にある三国山脈に源を発する四万川の上流、三方を1000m級の山々に囲まれる標高600mの山間(やまあい)に位置する。
ここは、上信越国立公園内にあり、昭和29年、優れた環境と温泉の効能を条件とする「国民保養温泉地」の第一号(他に酸ヶ湯/青森県、日光湯元温泉/栃木県)に認定されている。
草津温泉から四万温泉に向う途中の暮坂峠(標高1,086m)。近くに若山牧水の銅像がある。
4つの共同浴場があり、写真はその一つ河原の湯
この日、東京の実家から関越自動車道に乗り、渋川伊香保ICで降りた。
四万温泉へは、ここから国道17・353号線で向うのが一般的なルートだが、先ずは伊香保温泉近くの水沢(観音)に向った。
目的は、以前に食べた日本三大うどんの一つ、水沢うどんをもう一度味わいたかったからだ。
水沢観音に近づくと街道沿いにうどん屋が次から次へと現れてくるが、観光バスが停まっている大型店は避け、岩戸屋の看板がかかる店に入った。
水沢うどんが、全国的に「三大うどん」の一つとして認知されているか定かではないが、コシがとても強く美味なことには間違いない。
これだけ強いと普通のつけ汁では負けてしまうのか、胡麻垂れで食するのが一般的なようだ。
岩戸屋
電話:0279−72−2880
写真は「もりうどん」700円
汁は胡麻垂れでコシが非常に強い。
水沢での昼食後、ナビの指示するままに裏道で沢渡温泉に向った。

沢渡温泉では、前回、共同浴場で入浴したものの、温泉好きによく知られる「まるほん旅館」での入浴は逃していたのだ。

念願を果たし、国道353号線に乗って四万温泉へ。
時間にして30分足らずで、積善館に到着した。

よく知られる「まるほん旅館」の風呂
佳松亭貴賓室(望月の2)2人1室1人26.250円
冒頭にお断りする。
右上に記載の部屋名・宿泊料とも、隠居の身には身分不相応だ。
自分が基準とする料金レベルを遥かに超えており、今まで最高だった湯布院温泉・ほてい屋をも上回る。(このときは、定年祝いに長女夫婦がプレゼントしてくれた旅行券を利用)
しかし、敢えて予約したのは次の理由による。
●以前から宿泊したかった四万温泉だが、国道が行き止まりとなり、他の温泉に立ち寄るのが不便なため引き伸ばしていた。
今回、ここを逃すとスタッドレスタイヤを持たないため、来年春まで持ち越すことになる。
●泊まるとしたら、料金が飛びぬけて高い「四万たむら」
は始めからパス、押し付けがましい太鼓ショーや演芸大会があり、かつ女将が少ししゃしゃり出過ぎの「四万やまぐち館」は好みではない。
●上記の消去法に関わらず、今でも湯治システムを続けている積善館の姿勢に感銘、それに名物の元禄の湯にどうしても入浴したかった。
●人気の積善館なのに直前の予約、ダメもとでホームページを覗いたら「貴賓室」だけが空いていた。

●丁度400湯達成に当り、その記念に一生に一度の「貴賓室」なる部屋に宿泊してみよう。

という訳で、所定事項を記入の上、「予約」を思い切ってクリックした。

結論から先に述べると、この料金を上回る満足感を得られた。
「貴賓室・望月の二」は、パンフレット・ホームページに記載されている部屋。(16畳和室・8畳ほどの洋間・石庭の茶室・パウダールーム・踏み込み・縁側・BT)
10mを超える横長の窓の向こうには、巨木の松の上部がまるで狩野派の絵画のように広がっている。なるほど「佳松亭」のネーミングの由来が分かる。
ここは浴衣は2着、枕は2種類から選べる。
赤い欄干の慶雲橋を渡った先が積善館本館(右下が元禄の湯)。
新湯地区・新湯川沿いの四万温泉
●積善館の由来

元禄4年(1691年)、四万村の名主・関善兵衛が現在の場所に湯場を作ったことを以って創業年としている。
代々、土地の人は「せきぜん」と呼んでいたが、明治に入り十五代目の当主が易経の「積善の家に余慶あり」に意味を重ねて積善館の屋号となった。
因みに現館主は19代目である。

源泉は、昔と同じ新湯川の川底から今も湧き出ている。

本館の玄関部分には創業時の建物が残され、黒光りする柱や梁が往時を偲ばせ、日本最古の湯屋建築として県の重要文化財に指定されている。

また本館の1階部分にある有名な「元禄の湯」は、大正ロマンの香り漂う見事な風呂である。

積善館は3つの建物から構成される。

本館(26室)・・・1階〜3階
江戸時代の雰囲気を漂わす「本館」は、最近では木村拓哉の伊豆の踊子の舞台にもなったが、湯治宿の風情を色濃く残す。
現に今でも2人1室1人6000円(2食付)前後で、セルフサービス、夕食は京風弁当(自分で運べば部屋でも食べられる)の湯治に近い形態で宿泊できる。
尚、ガイドブックで表示される部屋数は、この本館部分を含まないことが多い

山荘(12室)・・・3階〜4階
昭和11年、当時の和風建築の粋と技巧を凝らした桃山様式の部屋で国の登録文化財。。
多くの文人・著名人がここに宿泊している。
今回、ここに宿泊したかったが、満室で希望が叶わなかった。
佳松亭(16室)・・・5階〜8階
山荘のさらに奥の高台に建てられた佳松亭は4階建てだが、本館・山荘から通算すると5階〜8階に相当し、本館から入るとエレベーターを2回乗り換える。

豪華な部屋もあり、石舞台や茶室を持つ部屋からは、老松の見事な枝振りを通して四万温泉が見下ろせる。
本館玄関の裏の山側には、佳松亭の1階(通産5階部分)に総合フロントがあり、山荘・佳松亭宿泊者はこちら側でチェックインする方が便利だ。

●風呂
どの部屋に泊まろうが、館内の風呂はすべて利用できる。
本館の「元禄の湯」と「混浴・岩風呂」、山荘の「山荘の湯(貸切風呂2)、佳松亭の「杜の湯(内湯・露天風呂)」がそれだ。
佳松亭前の飲泉所
本館の展示室
本館フロント
佳松亭フロント
元禄の湯への浪漫のトンネル
縁側
踏み込み
部屋内部の石庭と茶室(左側にある)
広々とした室内
狩野派の絵画を思わせる老松
● 杜の湯
佳松亭側の玄関、本館・山荘から通算すると5階〜8階となる。
杜の湯は、佳松亭1階(本館から通算すると5階部分)にあり、最も新しい風呂で、内湯と露天風呂から成る。
内湯の浴室は広々として、前方は大きなガラス窓がはめ込まれて開放的、露天風呂越しに森の木々が見通せる。
床は石板を敷き詰めたのか、タイルなのか定かではないが、色は元禄の湯に似て赤茶色だ。石板を敷いた大きな風呂は20人くらいが一度に入れる大きさで、端正な姿だ。
大小の岩石を巧みに配した露天風呂もかなり大きい。底も石が敷かれた2つの湯船から成る。小さい方は東屋で覆われ、湯温がやや低めに設定されている。
周囲には目隠しの塀が立っていて、眺望が素晴らしいとは言えないが、敷地が広いだけに開放感はたっぷりある。
●山荘の湯
「山荘」の3階部分にあり、貸切風呂2つから成る。
貸切風呂の場合、内湯+露天の組み合わせは稀にあるが、内湯に風呂2つあるのは珍しい。
外光が十分に入らない構造なので薄暗さを感じる。しかし逆に落ち着いて入浴出来るかもしれない。
混浴ということもあり、ここは写真を撮影したのみで入浴はしなかった。
尚、20時30分から21時30分までは女性専用タイムになっている。
2つある貸切風呂の一つ。詰めて2人が入れる小さな浴槽が2つあるユニークなスタイルだ。無料で予約が要らず、空いていれば中に入り鍵を閉める。
どこの旅館でも、貸切風呂は大いに売り物にするものだが、ここでは左の岩風呂を含めて、パンフレットに掲載していない。風呂に関しては余裕綽々だ。
宿泊後しばらくして、積善館から自宅に絵葉書が送られてきた。
宿泊礼状と季節毎の企画案内は珍しくないが、女将自筆の礼状は初めてだ。
根が単純な私はこれを見て感激。
まんまと女将の術中にはまったと分かっても、達筆でかなりの文字数の礼状を頂いた上、今回宿泊できなかった「山荘」で過ごしたいので、来春の再訪を心に決めた。
女将からはリピータの比率が非常に高いと伺ったが、最大の功労者は他ならぬ彼女かもしれない。
エピローグ
鄙には稀な、と言っては大変失礼だが、四万温泉でこのような洗練されたお料理を頂けるとは思わなかった。女性に人気の宿の理由の一つだろう。
総料理長は連泊を大変喜ぶ、と女将から聞いた。月替わりの夕食と異なる食材で料理を作るので、腕を振るえるからだそうだ。
●朝食
黄色いのは菊だが白い部分は忘却。
朝食は佳松亭ロビー奥のラウンジで取る。(椅子席が嬉しい)

テーブルの上に箱が置いてあり、それを引くと小皿に盛られた料理が現れた。
朝食も粋だった。
牡蠣鍋(だったと思う)。
朝食も華やかだった。
●夕食
白玉餡子
お茶ムース
野菜椀
飯(ひじき・銀杏・貝柱)
スッポン茶碗蒸し(巻貝・蟹・ふかひれ餡)
強肴(エリンギ他)
蕪柔煮
鰤大根
雑煮椀(甘鯛他)
安肝豆腐
 テーブルに箱が置かれている。
四万温泉・積善館 (群馬県)
水沢うどん
以下は「望月の2
入浴していたときは気がつかなかったが、半円と長方形を組み合わせたアーチ型の窓の形は、シャワールーム、蒸し風呂の入口にも見られ、これらが独特の雰囲気を醸し出している。
浴室の床も完成当時のものなのだろうか、外国産なのだろうか、赤茶色のタイルがとても渋い

入口に近い浴槽だけが大きめで、残りの四つはほぼ正方形、2人、詰めて3人が入浴できる小さなものだそれぞれの湯温は若干違うように思える。満たされる温泉は、前を流れる新湯川の川底から湧出する透明な硫酸塩温泉、大深度から汲み上げる単純温泉では味わえない、なんともまろやかな肌触りである。
昭和5年に完成した元禄の湯は、国の登録文化財で、温泉ガイドブックにも度々紹介される名物風呂だ。

和洋折衷、アンテイークな大正モダニズムの雰囲気が漂う浴室に石板敷きの浴槽が5つ並ぶ。

●元禄の湯
風 呂
ユニークな5つの風呂が並ぶ浴室。カランなどは無い。
立ち寄り湯:午前10時〜午後5時 1,000円 元禄の湯と岩風呂のみ。 
宿泊した「望月の二」からの風景
●岩風呂
本館にあり積善館では唯一の混浴風呂である(脱衣室は男女別にある)。大きな利根川の青石が組まれた立派な風呂だ。