我が国に5台輸入された日本で一番古いラジオ。天皇家、逓信大臣犬養毅、三井物産本社、三井本家、そして古屋旅館に各一台づつ納入された。「なんでも鑑定団」に出品されたそうだ。


決して広くないロビーだが老舗の品格が漂い、恒例の赤絨毯もここでは似合う。従業員の接遇はさすがに良好。

● 夕食

海岸線にはきれいなプロムナードが設けられている。

海沿いを走る国道135号線は渋滞が多い。

熱海海岸線の日没


熱海温泉 古屋旅館 (静岡県)

別府と並ぶ大温泉地・熱海は、バブル崩壊後の凋落は激しかったがどうやら底を打ったようだ。
全国2800人の芸者の内、今でも1割の300人がいる熱海温泉の底力は凄い。

創業以来200年の歴史を誇る熱海随一の老舗宿・古屋旅館に宿泊し、かけ流しの風呂と京風懐石を味わった。

熱海市は伊豆半島の東側付け根に位置し、神奈川県と境を接している。
市域の大部分が丘陵地帯で海岸線からすぐに坂道となり、住宅や別荘も高台に建つところが多い。
地域的には、熱海・来宮駅エリア、湯河原駅エリア、伊豆多賀・網代駅エリアに分けられ、すべての地区で温泉が湧いている。

姉妹都市を結んでいる別府温泉と並んで二大温泉地である熱海温泉は、東京の奥座敷として団体旅行や慰安旅行のメッカとして栄えた。

しかしバブル崩壊後、過剰投資や個人・家族・女性などの小グループ客への対応が遅れて急速に凋落し、旅館の倒産が相次いだ。

それでも年間350万人が訪れる大温泉地であり、近年の不況や原油高によって近場の熱海が見直され、観光客が若干増加傾向にあるようだ。

倒産した宿も多いが、それでも大小63軒の宿・ホテルがあり(旅館組合HPから算出)、別府・草津と並ぶ日本有数の大温泉地だ。

熱海温泉の歴史は古く奈良時代まで遡るそうだが、もともとは阿大美と呼ばれていた。
それが海中に温泉が湧き、海水が熱い湯になったことから「熱海」という地名になっそうだ。
江戸時代、徳川家が熱海を愛し、家康は度々この地で湯治を行い、三代家光はここに湯治御殿を造り、5代家綱や八代吉宗も熱海の温泉を献上させた。

明治時代になると多くの文人がこの地を訪れ、中でも熱海を全国に知らしめたのが尾崎紅葉の代表作(未完)で 、貫一とお宮の悲恋を描いた「金色夜叉」だ。

今、熱海温泉が抱えている課題とそれへの取り組みは、5年前の熱海市ホームページ中の市長の言葉から容易に推測できる。
「・・・一つ目の改革は、男性の団体客中心の観光地から、女性や小グループ・家族連れにも愛され心癒される観光地に変わることです。」

所在地 : 熱海市


温泉名 : 熱海温泉

施設名 : 古屋旅館  (宿泊日 : 2009.1.5  2人1室税込 1人25,350円 )

江戸時代中期、文化3年(1806年)創業以来200年の歴史を誇る熱海温泉でも有数の老舗だ。

当然のことながらここを定宿として滞在した著名人も多く、徳富蘇峰・横山大観・河合玉堂等の文化人や日露戦争で完膚なきまでにロシア海軍を打ち破っ東郷平八郎元帥など数知れない。

海には面しておらず、高いビルの間に埋まっているため、最後のアプローチが分かりにくい古屋旅館だが、正面玄関に到達すると黒塗りの豪壮な門が迎えてくれる。

武田信玄屋形門を復元したもので、門上には武田菱が彫られている。
これは黒沢監督の「影武者」に使用されたもので、先祖が武田家に縁があるので、撮影終了後に引き取ったものだそうだ(仲居さん談)。

料 理

都会のような国道沿い。

名所の大湯間欠泉は人工間欠になった。

風 呂

「影武者」で使用された武田屋形門


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前菜と先付を除き、上の写真がこのお品書き順になっていますので、お料理に関心ある方は見比べてください。

尾崎紅葉・金色夜叉の貫一がお宮を下駄で蹴る銅像。

316号室のの12.5畳・スタンダード和室(BT)。高級感があるしっとりした数寄屋造り。高いビルに囲まれているため、部屋からの眺めは悪い。
予算オーバーのついでに、8室ある露天風呂付客室も考えたが、3万円を超えるためにさすがに取りやめた。それでも箱根よりは格段に安いと思う。

朝食も品数が多く、ここでもお節料理も出て豪華、地元特産の美味しい干物も並んだ。いつにも増して朝食が美味しく、滅多にない御飯のお代わりもした。

全般に老舗の宿らしい、オーソドックスな料理が並び、ベテランの仲居さんの接遇も良好だった。

食事は夕朝とも部屋食。

料理は旬の素材を使い、丁寧に作られた料理がすべて京都から運ばれた華やかな食器に盛られ、見た目も鮮やかな懐石料理だった。
1月5日の松の内、前菜は目出度い食材を使った華やかなお節料理。
料理は1品か2品ごとに出され、ゆったりした食事ができる。
我々にはやや量が多かったが、それでも例によって皿には何も残さなかった。


● 朝食

データは変更されている可能性があります。お出かけ前に当館HPなどで確認ください。

 所 静岡県熱海市東海岸町5−24
電 話 0557−81−0001
交通機関 小田原厚木道路石橋ICから真鶴道路、熱海ビーチラインで約25km
JR東海道線熱海駅から徒歩15分 タクシーで5分
施 設(日帰り) 立ち寄り湯不可 駐車場(35台) 食事付き入浴4,200円〜(要予約)
宿 泊 26室 25,000円程度からだが、各種条件で価格が変動するので、予約前に下記HPで確認ください。
泉 質 ナトリウム・カルシウムー塩化物温泉
適応症 不記載(理由は「温泉の基礎知識ー温泉の効能」参照)
入浴時間(日帰り) 立ち寄り入浴不可 宿泊者は24時間
入浴料金
入浴施設 内湯男女各1、露天風呂男女各1
浴室備品 シャンプー、ボデイソープ、ロッカー、ドライヤー
観光スポット MOA美術館、戸田幸四郎絵本美術館、熱海城、中山晋平記念館、熱海梅園
お土産・食事 両方とも市内各所で。(特産品は干物)
近くの温泉 箱根温泉郷・湯河原温泉・伊豆山温泉・網代温泉・宇佐美温泉・伊東温泉
熱海市HP
観光協会HP
古屋旅館HP
http://www.city.atami.shizuoka.jp/
http://www.ataminews.gr.jp/
http://www.atami-furuya.co.jp/
雑記帳 我々の年代ならば、熱海と言えば尾崎紅葉の「金色夜叉」、そして「貫一・お宮」を思い起こす。しかし、お宮の松が立っていた熱海の海岸線は洒落たプロームナードに変身していた。

2代目のお宮の松だが、さすがに枝振りは良かった。

大湯近くにある湯前神社


建物は本館・別館とも鉄筋4階建て、すべて落ち着いた数寄屋造りの和室26室は一番狭い部屋でも12.5畳あり、すべて内風呂とトイレがついている。
このうち8室が露天風呂付で、源泉かけ流しの湯が注がれている。


江戸時代から明治時代にかけては、熱海七湯が湧き、厳格に27家だけに分配され、さらに分ける孫湯が禁じられていた。

古屋旅館では、この七湯の内「清左衛門の湯」を今でも所有している。
そのお陰で、大浴場・露天風呂・部屋付き露天風呂のすべてが、熱海温泉では珍しい加温・加水・殺菌無しのかけ流しになっている。

宿泊料金は2人1室で25,000円程度からだが(2009年6月現在)、各種条件で変動するので、予約の際は必ず下記HPを参照ください。

老舗らしい品格のある佇まい。駐車場は30台分有り。

内湯はかなり大きく品格ある桧風呂で、床は石タイルが敷かれて高級感・清潔感がある。
内湯から続く露天風呂は小型で、際立って豪華なものではなく眺望もないが、夜の行灯風の照明に風情があった。

数多い宿から古屋旅館を選んだ理由の一つが熱海七湯の一つ、清左衛門の湯の源泉を有し、内湯・露天風呂(部屋付きも含めて)ともかけ流しであることだった。

それも源泉から浴槽までの配管距離を計算し、源泉口で約90度の湯が浴槽に注ぎこまれる時点では、入浴に丁度良い温度になるよう設計されており、加水・加温・塩素殺菌・循環無しの完全かけ流しだ。


泉質はナトリウム・カルシウムー塩化物温泉で口に含むと塩分味がする。
透明だが、風呂の素材か照明のためかやや茶色く見えた。