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高山村は長野市の東20kmほど、県の北東部にあり三方を山に囲まれていて、背後には志賀高原がひかえている。
村を流れる松川上流の渓谷は紅葉の名所で知られ、シーズンには観光客の車で大渋滞が起きる。
高山村は「湯つづきの里」と称している。
これは、志賀高原の横手山を源とする松川の渓谷沿いに7つの温泉が点在しているためで、これらを総称して「信州高山温泉郷」と言う。
村の農業はリンゴ・ブドウなどの果樹を中心としている。
私達が訪れた11月上旬、、県道沿いの果樹園には、たわわに実った真っ赤なリンゴが収穫を待っていた。
果物街道を通るときはいつもするように、直販所に立ち寄って、土産や近所に配るものを含めて、大量にリンゴを買い込んだ。
この日、前日泊まった四万温泉から志賀高原に向かい、途中、湯の平温泉(原稿準備中)に立ち寄ってから、熊の湯温泉で入浴した。
熊の湯温泉近くから、(信州高山温泉郷)奥山田温泉に出る細い道(大型車進入禁止・冬季閉鎖)があるが、少し前、秋山郷から志賀高原に出る林道で落石・路肩崩れの中を走ったことを思い出して敬遠。
3倍・4倍の遠回りをして、小布施まで出た。
小布施から県道66号線に乗って東へ進み、信州高山温泉郷に向う。
のどかな山里にある蕨温泉を通り過ぎると、道は松川沿いをじょじょに高度を上げていき、子安・山田・松川渓谷温泉を通り過ぎ、標高1,160m、周囲の紅葉が終わった五色温泉に到着した。(この奥に七味温泉・奥山田温泉)
雑然としたロビーに年季の入った応接セット。
これだけ見ると、宿泊料金は7,000円〜9,000円と推定してしまう。
ロビー内の料金表掲示。
本館(BT無)16,425円円
新館(BT付)19,050円
本館6室・新館6室。写真の新館は、10畳に絨毯敷きの広縁、踏込み、BT付でゆったりしている。因みに照明はかなり暗く、これはランプの宿の雰囲気を残したのだろうか。部屋の金庫が100円入れてロックするシステムには驚いた。
五色温泉の一軒宿五色温泉旅館。奥が本館、手前が新館。県道沿いなので見落とすことは無い。
五色温泉旅館は松川渓谷の上流にあり、以前はランプの宿と呼ばれていたようだ。
今でこそ、2万円近い宿泊料金を取る6室の新館があるが、平成9年までは、トイレがない6室だけの小さく古びた秘湯の宿だった。
本館と新館のアンバランスは際立っていて、本館ロビーだけ見ると、今時、秘湯の宿でも見かけない質素さで、その上、雑然としている。
しかし、ここには上記のような料金表が掲示されていて、立ち寄った人は、その料金に驚くかもしれない。
一方案内された新館の部屋は、簡素な造り・調度ではあるものの、広々として清掃が行き届いた快適な部屋だった。
荷解きもそこそこに、何はともあれ露天風呂に向う。かなり傷んだ通路を通って外に出て、渓流に向って降りていくと木造の簡単な脱衣小屋がある。そこから階段を数段下りていくと露天風呂がある。
やや黒ずんだ乳濁色の混浴露天風呂。
沢の水が激しく流れ落ちる対岸の崖、澄んだ松川の渓流。
それらを目の前にして、何の手入れもしない河原に、10人ほどが一度に入れる素朴な露天風呂が設けられ、やや黒ずんだ乳濁色の湯が満たされていた。
泉質は、含む硫黄ーカルシウム・ナトリウムー塩化物・硫酸塩・炭酸水素塩温泉という濃厚な湯、硫化水素臭があって、口に含むと硫黄味が伴うえぐい湯だった。
この温泉は、メカニズムは不明だが、日によって黄・緑・白・黒・空色・無色に変わるそうで、これが温泉名の由来になっている。
加温・加水無のかけ流しの温泉には黒い湯の華が舞い、風呂底はそれが沈殿してぬるぬるしている。
湯温は浸かる場所によって若干異なるので、適温を探して浸かり、ワイルドな周囲の景色を鑑賞しながら、最後まで独占して入浴を楽しんだ。
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何の手入れもしない自然の中で入浴を楽しむ。この混浴風呂以外に、少し小さ目で目隠しの設けられた女性専用露天風呂がある。
露天風呂以外に男女別の内湯と小さな湯船の貸切風呂が2つある。
すべてカランとシャワーがなく一昔前の風呂場スタイルだが、床・壁・風呂場ともすべて木造。
湯と湯気で晒された木の風合いは、温泉好きなら堪えられない風情で、随喜の涙を流すことだろう。
因みに湯温がかなり高く、失礼して水を足して、我慢して入浴出来る温度まで引き下げた。
貸切風呂は2つ、空いていれば無料で入浴出来る。
小さめの木造の内湯、カランはない。
山川の食材を使った素朴な料理。
朝食が、今まで泊まった宿の中でワースト1かな、と思う位で不満が残った。
岩魚・沢蟹・山菜/木の葉/茸の天ぷら・・これらがこの宿の売り物。
朝食
この宿の評価は難しい。宿泊料金に見合った満足感が得られるかどうかだ。
浴室にカランもシャワーも無いのに不便を感じる人がいるだろうし、温泉マニアにはたまらない浴室・風呂の風情も、慣れていない人には、じめじめして不潔と感じるかもしれない。
山間なのでそれほどの期待を抱かないだろうが、料金を考えると食事にも不満が残るかもしれない。
ロビーや風呂場への通路の古色蒼然さに驚く人もいるだろう。
それに階段の上り下りが多いので、足腰に支障がある人には辛いかもしれない。
料金が1万円(本館)〜15,000円(新館)ならこれらの不満・文句が出ないだろうが、やや割高感を感じる人もいるだろう。
しかし、秘湯・かけ流しが注目されている現在、この値段でも納得しなければならないのかもしれない。
ここは、快適性・料理にこだわらない、真の温泉好きに向いた宿に思える。
信州高山温泉郷の一つ、五色温泉の一軒宿・五色の湯旅館は、標高1000mを超える松川渓谷沿いにあり、五色に変わる源泉かけ流しの湯が素晴らしい。