改定版
9年ぶりに訪れた川底温泉蛍川荘の佇まい・雰囲気は昔のままだったが、旅館業は止めて日帰り専用施設になっていた。
上部の採光窓から僅かに取り込まれる外光だけの薄暗い浴室、そして江戸時代末期に開湯された当時のままという3つの風呂が醸し出す風情は極上、すべての浴槽の縁から静かに溢れ出る透明な温泉が、黒く変化して素材が分からなくなった床を1年中乾くことなく濡らしている。
尚、写真の一部は、ご厚意により福岡在住で温泉仲間のプースケさんが撮影されたものを掲載させて頂いた。
九重町は大分県の南西部にあり、東は由布市・竹田市、北西は玖珠町、南西は熊本県阿蘇郡に接している。
町の北部には東西に走る大分自動車道、東側には南北に縦断し九州を代表する山岳道路である「やまなみハイウエー」が通っている。
町の中央部を筑後川上流の玖珠川が東西に流れ、西側は標高350m〜1,000mの山林や田畑、東南には九州の尾根・標高800m〜1,700mに達する九重連山がなだらかな稜線を描いている。
九重連山(九重山)は九重町から竹田市北部に広がる火山群の総称で、最高峰は中岳(1791m)、日本百名山の一つに数えられ、一帯は阿蘇くじゅう国立公園に指定されている。
町は観光資源に恵まれ、「高原と温泉の町」を謳っている。
高原(飯田高原他)、峡谷(九酔峡他)、滝(日本の滝100選の振動の滝・竜門の滝他)、そして町域には筋湯温泉をはじめ数多くの温泉がある。
住 所 | 大分県玖珠郡九重町菅原1453 |
電 話 | 0973−78−8234 |
交通機関 | 大分自動車道九重ICから国道210・387号線で約15km JR久本本線豊後森駅から大分交通バス小国行きで30分、川底温泉下車すぐ |
施設(日帰り用) | 駐車場(20台) |
宿 泊 | 不可 |
泉 質 | 単純温泉 (86℃ 無色澄明 180リットル/分 pH7.03 但し昭和47年の古い成分表) |
適応症 | 不記載(理由は「温泉の基礎知識ー温泉の効能」参照) |
入浴時間(日帰り) | 営業時間不明 以前は8時〜21時だった(予約不要)。 |
定休日 | 無休 |
入浴料金 | 大人500円 |
入浴施設 | 混浴大浴場1、女性用内湯1(以前は露天風呂1、貸切風呂1があったが現在は不詳) |
浴室備品 | 混浴浴場にはシャンプー・手桶など置いてあるがカランはない。 |
観光スポット | 竜門の滝、飯田高原、九酔峡(九重”夢”大吊橋)、耶馬溪、阿蘇山、久住高原 |
お土産・食事 | 現地では不可 |
近くの温泉 | 宝泉寺温泉郷、壁湯温泉、黒川温泉、小田温泉、筋湯温泉、奥万願寺温泉、筌の口温泉、天ヶ瀬温泉など多数 |
九重町HP 観光協会HP |
http://www.town.kokonoe.oita.jp/ http://www.kokonoe-k.com/ |
雑記帳 | 九重は町の場合は「ここのえ」、山・温泉・高原等の自然・観光の場合は「くじゅう」と呼ぶようだ。尚、九重連峰には、単独の山として「久住山」がある。 |
九重連山の西麓に広がる飯田高原(はんだこうげん)は、標高800〜1,200m、阿蘇くじゅう国立公園内にある。
この一帯はやまなみハイウエイをはじめ、どのルートを走っても雄大な景観を見ながらの心弾むドライブが楽しめる。
この周辺の温泉は、以前、九重九湯と称していたが、現在は「九重”夢”温泉郷」と称している。
これは言うまでもなく、今や大分県のみならず九州全体の観光スポットとなった「九重”夢”大吊橋」をなぞったものだ。
この温泉郷には、「筋湯・宝泉寺・長者原・湯坪・龍門・壁湯・筌の口・寒の地獄・馬子草・九酔渓・川底・水分」の温泉が含まれる。
川底温泉は、大分自動車道九重ICから国道387号線を万年山(1140m)の東麓を巻くようにして南下、底から自噴する洞窟風呂で有名な壁湯温泉を通り過ぎて間もなく左手に現れてくる。
一軒宿の蛍川荘は、大分県と熊本県の県境、6月になると蛍が舞う町田川の河畔に建つ。旅館と書いたが、現在は宿泊を止め、日帰り入浴客だけを受け入れている。
第一回九州遠征以来9年ぶりの再訪だったが、建物の外観も混浴の内湯も見かけは全く昔のままだった。
しかし宿泊は受け付けず日帰り専用施設となっていて、もはや川底温泉の一軒宿とは言えなくなった。
久しぶりの第三回九州遠征、飯田高原周辺で、もう一度入浴したい温泉を思い浮かべた時、文句なくトップで躍り出てきたのが蛍川荘だった。
ここは、江戸時代末期の安政3年(1856年)に、当時の庄屋が川底に石を敷き詰め湯小屋を建てて温泉を開業したのが始まりだそうだ。
三つの浴槽はほとんど当時のままで、底には大小の川石も敷かれている。
浴室全体が薄暗く、溢れだした温泉が周囲の黒ずんだ床を濡らし、浴室全体に湿気がこもって、人によっては必ずしも好まれない雰囲気かもしれない。
しかし温泉好きには、泣いて喜びそうな光景が五感を訴えて随喜の涙を流すだろう。
2006年10月開業以来、大分県を代表する観光スポットになった「九重”夢”大吊橋」も町域に在る。
蛍が舞う町田川の河畔に建つ蛍川荘。現在は日帰り入浴のみを受け付けている。川底温泉にはここ以外に、近くの日帰り施設「せせらぎの湯」が営業している。
温泉がここから落されているが、この先がトレースできない。
女性用の内風呂は、少し離れた場所にある。(プースケさん撮影)
町田川を跨ぐ橋を渡って行く。
玄関先の青い暖簾の向こうには「見学のみは厳禁です」と「入浴料金大人500円」の札が掛かっている。
手書きの貼紙群。「料金は前払い」「女性はバスタオルを付けたまま入浴しても良いです」「監視カメラ作動中」もう一回「見学のみは厳禁です」「混浴風呂直進、男女」
前回も今回も街道沿いに目立つ看板が立てられていた。
菅原道真公ゆかりの温泉!はちょっと怪しいが愛嬌。
混浴の薄暗い浴室、江戸時代からの三つの浴槽、溢れだした温泉が黒ずんだ床を濡らす。マニアにはたまらない雰囲気だ。
それぞれの浴槽は、6,7人が入れる大きさ。
大小の川石が3ヶ所の浴槽に敷き詰められている。泉質は透明度の高い無味無臭の単純温泉。
筋湯温泉のうたせ大浴場ほど高くはないが打たせ湯がある。
温泉が先ずここに流されてくるが、ここから先、浴槽までのルートが分からない。
上部からの採光のみでいつも薄暗い。手前が一段低い浴槽で、湯が前の浴槽から落ちてるので湯温がかなり低くおり、何時間でも浸かっていられる。
手前と真ん中の浴槽は、どこから温泉が落されているか分からない。足元湧出と書かれた記事も見かけたがこれは無い。
浴槽の底に積んだ石の間から注いでいるのだろうか?