塩原温泉郷元湯温泉 大出館 (栃木県)
   

塩原11湯の中で最も秘湯度合いが高い元湯温泉は、塩原温泉郷発祥の地である。かっては元湯千軒と言われたほど繁栄していたが、万治2年(1659年)の大地震で大部分が埋没してしまった。現在の宿は、元泉館・ゑびすや・大出館の旅館3軒だけ、今回は黒湯で知られる大出館に立ち寄った。
所在地 : 那須塩原市湯本塩原

大出館には全部で8ヶ所の風呂がある。
女性用もあり全部で入浴出来るわけではないが、家内を外で待たせているので、他は全て捨てて墨の湯に向かった。
(営業時間10時〜14時 大人600円)

かなり広い浴室にそれぞれ10人は一度に入れる中規模の浴槽が2つあり
片方が黒い温泉で満たされた墨の湯、もう一方が鶯色に白濁した温泉の鹿の湯である。

驚いたのは、浴室内のタイルが全部で何十枚もはげ落ちたり変色していたことだ。

予算が無いから修理しないのか、この方が秘湯の雰囲気が出て良い、と判断しているのか定かではないが、2色のまったりした温泉と崩壊美ともいうべき浴室全体が不思議にマッチして、温泉マニアなら随喜の涙を流すこと請け合いだ。

墨汁を流したような墨の湯

元湯温泉は、塩原11湯の中で最も秘湯度が高いが、ここ大出館は、日本秘湯を守る会の宿の会員宿に相応しい雰囲気を館内と風呂にぷんぷんと漂わせている。

温泉マニアなら、ここの「墨の湯」とすぐ近くのゑびすやの「梶原の湯・弘法の湯」に一度は浸かってみたいと思うだろう。

この日、前日宿泊した福島県・二岐温泉大丸あすなろ荘を発ち、この日の宿泊地・日光湯元温泉ゆ宿美や川に向かう途中、ほぼルート上の塩原温泉郷元湯温泉に立ち寄ることにした。

かってここの元泉館に宿泊したのだが、チェックインが遅くなってすぐ隣のゑびすやと少し先にある大出館での立ち寄りを逃していたからだ。

家内を待たせているため、両方に入浴する時間は無い、散々迷って「墨の湯」に浸かるため大出館に立ち寄った。

塩原温泉郷は、渓谷美を誇る箒川及びその源流に沿って(1ヶ所のみ例外)多数の温泉が点在し、これを「塩原11湯」と呼ぶ。

東北自動車道西那須野塩原ICから国道400号線に乗って西へ進むと、最初に現れる「大網温泉」から始まって、「福渡」「塩釜」「塩の湯」「畑下」「門前」「古町」「中塩原」「元湯」「新湯」までの11湯である。

11湯は規模・雰囲気・泉質などが異なり、1度や2度の宿泊ではとても全貌を掴めないが
共通しているのは湯量が豊富でかけ流し、昔ながらの雰囲気を保つ素朴な宿が多いことだ。

宿泊施設が70軒ほど、年間120万人が訪れる大温泉地だが、11ヶ所に分散、かつ山腹や渓流沿いの限られた土地に建つ小規模の旅館が多いため、むしろ秘湯の雰囲気すら漂わせている。

2005年1月1日付けで黒磯市・西那須野町・塩原町が合併して那須塩原市が誕生した。

市は広大な那須野が原の北西一帯を占め、東京から150km圏の距離にある。

旧塩原町の西側、塩原地区は那須火山帯の山岳地帯で、塩原温泉郷はここに位置している。
町の中央を箒川が流れ
多数の滝や渓谷が塩原温泉郷の素晴らしい景勝をつくっている。

関東を代表する温泉地の一つ塩原温泉郷は1000m級の山々に囲まれ、標高500m以上の高冷渓谷地帯にあるため、秋の紅葉は見事だ。

特に日光方面から鬼怒川を経由する「日塩もみじライン」沿いは、季節になると全山が錦綾なす紅葉の名所である。


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大出館のHPを見ると2種類の源泉の分析表が掲載されている。

一つは「五色の湯ー源泉名:御所の湯ー含硫黄−ナトリウム−塩化物・炭酸水素塩温泉(50.9℃)」

もう一つは「墨の湯ー源泉名:五色の湯No3含硫黄−ナトリウム−塩化物・炭酸水素塩温泉(52.6℃)」とある。

泉質名は同じだが、墨の湯には第一鉄イオンを含有しており、これが酸化して黒湯となる要因のようだ。
因みに赤くなるのは第二鉄イオンを含んでいる場合とのことだが確認していない。


大出館では「五色の湯」として温泉自慢をしているが、これは黒湯を含めたすべての源泉の総称らしい。

鶯色に見える鹿の湯

奥が墨の湯、手前が鹿の湯

箒川沿いの無料共同浴場・福渡温泉 岩の湯(混浴)

美しい色調の風呂の縁

脱衣所

温泉名 : 那須温泉郷元湯温泉
フロント

墨の湯、見かけよりは濃くない。すごい量の微細な灰色の湯の華が(舞っているどころでなくて)溶け込んでいる。

テラス

ロビー前

客室

塩原11湯のほとんどが箒川沿いにあるが、元湯温泉は西側最深部の山間にある。

箒川に沿って走る国道400号線からそれて、ヘアピンカーブが続く山道(危険な道ではない)を4kmほど進んだ先に元湯温泉がある。
塩原温泉郷の中では最も秘湯度が高い。

塩原温泉郷は大同年間(806年〜810年)に赤川河畔に湧く温泉が最初に発見され、最近開湯1300年を迎えた。
ここが現在の元湯温泉で、塩原温泉郷発祥の地となる。
かっては元湯千軒と呼称されるほど栄えたが、万治2年(1659年)の大地震で埋没してしまった。

しかし、温泉神社を再建したときに再び温泉が湧出し、現在は温泉好きを唸らせる風呂を持つ3軒の宿、元泉館・ゑびすや・大出館が営業している。
大出館の黒湯が有名だが、上の写真は宿泊した元泉館の邯鄲の湯の黒湯で、こちらの方が墨の湯より黒かった。
仲居さんによれば、雨の日は、何故か黒くなると教えてくれた。(この日も雨だった)
大出館の玄関にはお馴染みの「日本秘湯を守る会」の黒ずんだ提灯がぶら下がる。
赤川の渓流を見ながら入浴する元湯温泉元泉館の露天風呂。
住 所 栃木県那須塩原市湯本塩原102
電 話 0287−32−2438
交通機関 東北自動車道西那須野塩原ICから国道400号線等で約30km
東北新幹線那須塩原駅からバスで60分、塩原温泉バスターミナル下車、タクシーで13分
施 設(立ち寄り) ロビー休憩、駐車場(20台)
宿 泊 26室(T7 BT無し19) 
8,550円〜13,800円(2010年1月現在)
料金は各種条件で変動するので、予約の際は下記の宿のHPを参照ください。
泉 質 墨の湯:含硫黄−ナトリウム−塩化物・炭酸水素塩温泉(52.6℃)
五色の湯(御所の湯): 含硫黄−ナトリウム−塩化物・炭酸水素塩温泉(50.9℃)
適応症 不記載(理由は「温泉の基礎知識ー温泉の効能」参照)
入浴時間(日帰り) 宿泊者は24時間(露天風呂・大浴場は6時30分〜22時
立ち寄り入浴は10時〜14時(予約不要)
定休日 無休
入浴料金 大人 600円
入浴施設 内湯:混浴4 女1 露天風呂:混浴1 女1 貸切風呂1(予約不要) 
浴室備品(立ち寄り湯) シャンプ、ボディソープ、ロッカー、ドライヤーなどは、墨湯だけしか入浴していないので不詳。
観光スポット もみじ谷大吊橋、回顧の吊橋、稚児ヶ淵、千本松牧場、回顧の滝、龍化の滝、秋の日塩もみじライン那須高原、日光江戸村 日光猿軍団日光
お土産・食事 土産は館内、昼食不可
近くの温泉 塩原11湯、鬼怒川温泉、川治温泉、湯西川温泉、奥鬼怒温泉郷那須温泉郷
那須塩原市HP
旅館組合H

大出館HP
http://www.city.nasushiobara.lg.jp/
http://www.siobara.or.jp/
http://www.naf.co.jp/ooidekan/
雑記帳 元湯温泉の3つの旅館の内、元泉館に宿泊、今回大出館に立ち寄ったので残るのはゑびす(梶原の湯)だけとなった。
それにしても宿泊もしているのにまだ1ヶ所残すこの効率の悪さ。
諸般の事情があってのことだが、果たしてゑびすやに入浴することができるだろうか。
データ (変更されている可能性もあります。お出かけ前にご確認ください。)

カラン2ヶ所と石鹸だけ、シャワーは無い。

入浴せず覗いただけの貸切風呂。

墨の湯入浴中に、アジア系の女性が入って来て清掃を始めた。(おおらかだ!)。
正面、タイルが数多く剥がれおちている。

施設名 : 大出館(おおいでかん) (入浴日:2009.5.14) 
夜の露天風呂