玄関のガラス扉。流水と紅葉が美しく刻まれ、百人一首・在原業平朝臣の「ちはやぶる神代もきかず龍田川からくれなゐに水くくるとは」を連想した。

部屋毎の靴箱。自分で出し入れ出来て便利だ。

眼前に日川渓谷の原生林が迫るロビー。

分厚い板のベンチとテーブルが置かれた談話室。

珍しい木造の吹き抜け。梁の構造・造りからして一階の天井と2階の床を取りはらってこの形にしたのでは?

館内の精緻な造りの引き戸。

黒光りする階段

夕食に10種類のきのこが出た。

談話室のテーブルに彫られた昆虫類。

蔦などで手作りした照明器具。

客 室

1階 しらかば 2人1室1人 16、800円(税込)

客室が12室(すべてシャワーT付き 和室10 和洋室2)のこじんまりした宿だ。
部屋は最小で10畳、二間続きの部屋が多い。
料金は2人1室で1人税込15,750円・16,800円・17,850円・18,900円の4段階(2012年2月20日現在、土日祭日算無し 1人宿泊は2,100円加算)で、2万円を越える部屋は無い。

宿のHPの「料金表」を見ると、全室の部屋様式と部屋毎の人数に応じた1人当たり料金が表示がされているので、これを参照しつつ(インターネットでなく)電話で部屋の特色を聞きながらを指定するのがベストな方法だ。


私も予約の際に希望を告げたところ、風呂や食事に楽な本館1階、玄関横の「しらかば」(和室14畳)を用意してくれた。
どっしりした中に懐かしさと温もりを感じ、それと三方に窓がある明るい部屋で眺望も良く、料金は、中位の1人16,800円だった。

どっしりとした和室だが温もりと懐かしさを感じるしらかばの間。ここの照明も蔦を編んだ手作りのシェード。

床の間の朽木を利用した秋を感じさせる生け花。

後の6畳、仕切りが重厚かつ精緻で素晴らしい。


部屋からの眺め。窓を閉めても(気にならぬほどに)瀬音が聞こえてきた。

昔懐かしい鏡台。ふだんは、これに布で覆いがしてあったような記憶がある。

6畳隅には、衣桁屏風が置かれていた。

ウッディな洗面所。

他の部屋も覗いてみました。

太い柱と梁がめぐらされたロビー。

日川(嵯峨塩)渓谷にかかる吊り橋。観光用ではないようだ。
渓流の瀬音が部屋まで響いてくる。

展望台・湯上がり処・喫煙所を兼ねる。ここに海抜1208mの表示があった。
大菩薩峠はここから北へ10kmほど先にある。

温泉法の温泉条件を満たさないことが判明したため、嵯峨塩鉱泉と称している。一軒宿の嵯峨塩館は明治35年創業、110年の歴史を誇る。

やまと天目山温泉(やまとふれあいやすらぎセンター)を通過すると背後には幾重にも山々が連なり、標高が1000mを越える。間もなく到着だ。

すぐに上記掲載の景徳院を通過し、急こう配の坂道を進む。
地図上に表示された髪の毛のような細さから、すれ違いが難しい隘路を想像したが途中までセンターラインもあり、思ったより広い県道だった。

中央自動車道勝沼ICから国道20号線(甲州街道)で東京方面へ少し戻る。
この標識(大菩薩峠方面)が出てくるので左折、県道218号線に入る。
嵯峨塩温泉まで約10km。

館 内

(非温泉)

大菩薩峠(1897m)の南麓、標高1200mの高所に位置する嵯峨塩館は、温泉法に定める条件を満たす温泉でないことが判明、「嵯峨塩温泉」を「嵯峨塩鉱泉」と改め、日本秘湯を守る会の宿からも脱会した。
しかし、そんなハンディを乗り越えて大きな満足を得られる宿だ。

かっての豪族の館のような雰囲気を漂わす館内と客室、最近流行の薄っぺらな和モダンとは一味異なる素朴さ・懐かしさ、そして湯治場として明治35年に開業した老舗の歴史も感じさせてくれる。

しかし何と言っても特筆すべきは、山・川・地元の食材をふんだんに使用した、手の込んだ滋味あふれる料理が素晴らしいことだ。

女湯、左側にシャワー有り。

湯落しは日本最古のワイン用葡萄棚の杭。

男内湯の向こうは露天風呂。

● 夕食

夕食・朝食ともテーブル席の食事処で取る。
厳密には温泉宿では無い嵯峨塩館なのに、口コミ評価が高く、リピーターが多いのは、館内・部屋の造りと特に山家会席と称する料理に依るものだ。


夕食は一品毎に供され、海の食材を排し、山川の幸や自家菜園の無農薬野菜などを使った滋味豊かで、一つとして手を抜いた品が無い手の込んだ料理が地味な食器に盛られて供される。

絶品の連続で夫婦そろって大満足した。

データ (変更されている可能性もあります。お出かけ前にご確認ください。)
住 所 山梨県甲州市塩山牛奥5532
電 話 0553−48−2621
交通機関 中央自動車勝沼ICから国道20号線県道218号線で大菩薩峠方面へ約15km
JR中央本線甲斐大和駅からタクシーで20分
(同駅から無料送迎車有り 要予約)
施 設(日帰り用) ロビー休憩、外に湯上り処を兼ねる展望台あり、駐車場
宿 泊 12室(和室T10 和洋室T2 Tはすべてシャワートイレ)
2人1室1人15,750円〜18,900円(税込)
 1人宿泊OK 2100円加算
泉 質 アルカリ性の鉱泉(非温泉)
適応症 不記載(理由は「温泉の基礎知識ー温泉の効能」参照)
日帰り入浴時間 午前11時〜午後3時
土曜日のみ午後12時〜午後3時
定休日 不定休
日帰り入浴料金 大人500円
入浴施設(宿泊) 内湯男女各1、露天風呂男女各1、貸切風呂1
浴室備品 シャンプー、ボディソープ、ロッカー、ドライヤー
観光スポット 恵林寺、菅田天神社、大菩薩峠登山、旧高野家住宅(重文)笛吹川フルーツセンター、苺・桃・ブドウ狩り、桃開花鑑賞、西沢渓谷、武田神社
・近郊:昇仙峡・富士五湖・清里
お土産・食事 季節の桃・ブドウ・いちご・サクランボやワインなどを周辺直販所やJAで。市域にワイナリー多数。
嵯峨塩館少し手前に蕎麦処との「砥草庵」 地元名物として「ほうとう」
近くの温泉 笛吹川温泉石和温泉・塩山温泉・湯村温泉・川浦温泉芦安温泉桃の木温泉・一宮温泉・岩下温泉・御坂温泉・国母駅前温泉・ももの里温泉・山宮温泉・ほったらかし温泉はやぶさ温泉宮川温泉山口温泉正徳寺温泉
甲州市HP
観光協会HP
嵯峨塩館HP
http://www.city.koshu.yamanashi.jp/koshu/
http://www.koshu-kankou.jp/
http://www.eps4.comlink.ne.jp/~sagashio/
雑記帳 最近、家内の好みそうな宿を選ぶことが多いが、このために参考になるのがじゃらんの口コミ評価。
じゃらん経由で実際に宿泊した者のみが投稿・評価できるシステム、かつ厳しい目で見る女性が多いので、これ拠った宿の満足度は高く、「最近の旅館はいつも当たり」と言っている。
今回の嵯峨塩館も「当たり」だった。
かっては温泉だったが、現在は温泉法別表に満足する成分を含んでいないため、嵯峨塩鉱泉と称し、日本秘湯を守る会からも脱会した。
しかし、この鉱泉はpHが10を越えるアルカリ性のために皮膚へのしっとり感がある。
全国に含有成分の薄い単純温泉がいくらでもあるので、このことには拘らないで予約を入れた。

この日(2011年9月14日水曜日)、宿泊客は私たち夫婦1組のみだったので、男女別の内湯と露天風呂を自由に使って良いと言われ、代わりに一ヶ所ある貸切風呂は湯が落されていた。
内風呂は男女とも同じ程度の規模でさほど大きくないが、浴室の黄色・オレンジ系の石板モザイクと檜の浴槽のハーモーニーがとても美しい。
2ヶ所の露天風呂も似た規模・構造で、何れからも日川渓谷を見下ろせる。

立寄り入浴を受け付けている(詳細は下記)。

風 呂

夜食に談話室の囲炉裏端でもちを焼いて食べられる。コーヒーも飲める。
右の図書「甲州財閥物語」は食事中に友人が甲府財閥の名門出身で名前が「●尾」と話したらこの本を持ってきてくれた。(しっかり紹介されていた)

毒キノコに見えるタマゴタケなど初めて見るキノコ10種類とワイン豚の味噌仕立ての鍋物。食用キノコの収穫は宿泊した9月がシーズンだそうだ。

じゃらん口コミ評価(宿泊26件平均)

総合 : 4.8点

中里介山の小説で有名になった大菩薩峠(1897m)の南麓、標高1200mの高所に位置する嵯峨塩鉱泉・嵯峨塩館は、温泉法に定める条件を満たす温泉でないことが判明、「嵯峨塩温泉」を「嵯峨塩鉱泉」と改め、日本秘湯を守る会の宿からも脱会した。

しかし、そんなハンディを乗り越えて大きな満足を得られる宿だ。

古材・木材をふんだんに使用し、かっての豪農の館のような雰囲気を漂わす館内と客室、沢山の手作りの什器備品・照明器具や素朴なアンティーク家具が配置されていて、最近流行の薄っぺらな和モダンとは一味異なる素朴さ・懐かしさ、そして湯治場として明治35年に開業した老舗の歴史も感じさせてくれる。


特筆すべきは、海の食材を一切排し山や地元の食材をふんだんに使用した、手の込んだ滋味あふれる料理が素晴らしいことだ。
じゃらんの口コミ評価が著しく高いことに夫婦そろって、なるほど!、と納得した。

 部 屋 4.9  風 呂 4.6
朝 食 4.7  夕 食 4.7
接客・サービス 4.5  清潔感 4.9
所在地 : 甲州市塩山牛奥

女湯も3〜4人の規模。

黄色・オレンジ系石板のモザイクが美しい。

男湯、底まで木造(檜?)の浴槽に温もりを感じる。

有機野菜たっぷりの小鍋とサラダ、多種の漬物、川魚の甘露煮など。

甲州伝統・のし鮑の煮貝、ミョウガ寿司、地元特産食用ほおずき、梅肉野菜スティックなど、どれも珍しく美味だった。

施設名 : 嵯峨塩館 (宿泊日:2011.9.14)

脱衣所には御主人手製の額がたくさん掛けられていた。

女湯も美しい浴室だ。

似たような規模・構造の露天風呂からは日川渓谷を見下ろせる。

松茸ごはん

夕顔の餡掛け

蓬を練り込んだ手打そば

ウズラの焼物は外はカリカリで臭みも全く無く美味だった。ウズラ卵のワイン煮も驚き。

温泉名 : 嵯峨塩(さがしお)鉱泉(非温泉)

あまごの焼物

えごまや大葉が練り込まれた手製のこんにゃくはまるで冷やしたゼリー感覚。

桃のスープ(魚の口直し)

さすがブドウの本場「種なしウインク」など聞いたことのないブドウが売られていた。

嵯峨塩鉱泉へ向かう途中、いつの間にかこんな高度に上がっていた。

さして広くもない甲府盆地には、県庁所在地の甲府市を囲むようにして山梨市・甲州市・甲斐市等の紛らわしい名前を持った市がひしめいている(他に笛吹市・韮崎市なども)。
平成の合併を機会に、もっと大きな単位で合併しても良さそうなものだが、信玄公のお膝元は群雄割拠状態、随分と行政コストが嵩んでいるだろう。

甲州市は山梨県北東部に位置し、2005年11月、塩山市・勝沼町・大和村が合併し発足した。
市名が甲州市になったのは、市域に甲州と名がつく産物(例えば甲州ぶどう・ワイン)が多かったためだ。

戦後に養蚕から転換した果樹栽培や観光農園を中心とした農業が主要産業で、中でも勝沼町は、日本有数のブドウの生産地である。
また、勝沼町は日本で一番最初にワイン醸造が始まった地であり、甲州ワインのブランド名は輸入品に勝るとも劣らない評判を得ている。

国道20号線から県道218号線で大菩薩峠に向かう途中にある景徳院。

武田勝頼は織田・徳川連合軍と戦い敗戦、日川渓谷沿いに天目山を目指したが逃げ切れず、天正10年(1852年)3月11日、一族と共に自刃し武田家が滅亡した。

その後、徳川家康が勝頼の冥福を祈る為にこの地に景徳院を建設したが、度々の火災にあって現在はこの山門のみが残る。ここに勝頼・婦人・子供・将兵・侍女など50名の墓がある。

貸切風呂は、宿泊が我々一組だけ、男女の風呂を自由に使えたので閉じられていた。。

この湯溜の湯を手桶を使って洗いに用いる。かっての湯治場の時代の名残だろうか。

● 朝食

桑の実のアイス、餅入り汁粉・フルーツ(桃・梨)

ワイン牛の朴葉焼

大根とふかひれのタマゴ寄せ(?)

料 理

豚肉よりキノコが主役の鍋。
別の角度からのしらかば。迫り出しているので3ほうに窓がある。
嵯峨塩鉱泉 嵯峨塩館 (山梨県)